やぎ座
死んだ先にあるもの
※2021年1月4日~1月10日の占いは休載とさせていただきます。(2021年1月3日 追記)
「喰う/喰われる」という愛の形
今週のやぎ座は、王蟲に喰われるナウシカのごとし。あるいは、みずからを投げ出していく先を見出していくような星回り。
『風の谷のナウシカ』という作品において、主人公ナウシカの特異性がもっともむき出しになるのは、やはり反文明の象徴とも言える王蟲(オーム)との交信の場面でしょう。
ナウシカがはじめて聞いた王蟲の声は、「コロサレタ/コロサレタ コロス!!/アイツ コロス!!」という、人間の言葉ではない、心にじかに聞こえてくる哀しみと怒りの叫びでした。ナウシカと王蟲との精神的共鳴はすでにここから始まっていた訳ですが、5巻の終わり、王蟲が生きたまま腐海の苗床となり、木々の根に食い破られ、森になろうとしている姿を目の当たりにしたとき、ナウシカもまた王蟲とともに森になることを願います。そしてそのとき、王蟲の触手がのびて、ナウシカの身体をみずからの口の中に呑み込んだのです。民俗学者の赤坂憲雄は、この場面について次のように述べています。
そこにはいわば、喰う/喰われる関係が、極限の愛のかたちとして投げ出されていたのかもしれない。王蟲と粘菌とが合体して腐海の森をあらたに創造する場面には、さらに壮大なスケールをもって、この喰う/喰われる関係をめぐるドラマが繰り広げられているはずだ(『ナウシカ考―風の谷の黙示録』)
30日にやぎ座から「一線を見極めること」を意味する7番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の名誉や業績をこえたところで実現していきたいこととは何か?という問いを少なからず突きつけられていくはず。
プロティノスの遺言
3世紀にあらわれた代表的な新プラトン主義者であるプロティノスによれば、魂とは生命の始源であり、他のすべてに生命を吹き込む働きを持っており、人間はもちろん動物や植物、地球や天体にいたるまで魂を持っているのだと言います。
そしてそれらの個別的霊魂はすべて、根源的には一つであり、世界霊魂によって統べられている。それゆえに、万物は互いに交感しあうことができ、占いやテレパシーのような現象も可能になるのだ、と。
彼は臨終の場において、彼は弟子に「われわれの内なる神的なものを万有の内の神的なものへ返すように、いま私は努めている」と言い残したそうですが、彼の魂論はまさにここに極まっています。つまり、私たち人間は世界霊魂から一時的に生命力をもらっては、他の人びとや存在たちにそれらを与えていく中間的なパイプのような存在なのだと。
この年末年始のやぎ座もまた、自分や自分の人生をそうした媒介物の一つとして捉えた上で、その全体の流れや行き着く先を見定めてみるといいでしょう。
今週のキーワード
森の苗床となる