やぎ座
透明な芽生えとその進展
絆というもの
今週のやぎ座は、「鈴の音のかすかにひびく日傘かな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、不意に新たな生に開かれていくような星回り。
夏の強い日差しが降り注ぐ炎天下のなか、作者にはかすかに響いてきた「鈴の音」だけが救いに感じられたのでしょう。そしてその「鈴の音」はどうやら「日傘」をさして歩いている誰かの方から鳴ってきている。
暑さというのは水分だけでなく、人から精緻な感覚さえも奪うものですが、朦朧とする意識において、いかにも日傘の主の存在やゆくえは心もとなく感じられます。でも、だからこそ「鈴の音」はより一層やさしく儚く美しいものとして作者の胸に響いてきたのではないでしょうか。
そして、こうしたことはしばしば人と人との関わりにおいても起きていくはず。特に、弱弱しいことそれ自体の中に、何か特別な、無視しがたい微細さや、透明な芽生えを感じることが。
勝つことや成功すること、正常であり続けることの中では決して経験することのできない、そうした染み入るような有難さや切なさの中で初めて、私たちは絆というものを感じられるのでしょう。
19日にやぎ座から数えて「溶けあう感覚」を意味する8番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでどこか気を張って太く強く引いていた他者との境界線を不意に薄めていくことができるかも知れません。
「好き」を深める
境界線が溶けるとは、簡単に言えば相手を好きになるということ。ただ、「好き」と一言で言っても、そこにはいろいろな種類やプロセスがあります。
ただそれが在るだけで幸せな好き、もっとその秘密を知りたい1つになりたいという好き、好きなので広めたい貢献したいという好き、個人的に表現したくなる好き、憎くて憎くて仕方ないけどどうしても憎みきれないような好き。
一概にどの好きがよくてどの好きはダメということはありませんが、あえて言えば、「ただ好きなだけ」ではやはりダメなのです。厳密には、「ただ好き」は時とともに「貢献したい」「知りたい」「作りたい」「広めたい」「知らせたい」「殺したい」など他の衝動や感情と結びつき、移ろっていくことで「好き」が深まることはあっても、その逆はないということ。
今週のやぎ座は、そうした「好き」にまつわる自然なプロセスを自分の中で許可していくことが焦点となっていきそうです。
今週のキーワード
過激な弱弱しさ