やぎ座
背中で語るべし
沈黙の真ん中に立つ
今週のやぎ座は、「渾身のしじまゆつくり羽化の蝉」(三島広志)という句のごとし。あるいは、これまでどこかに秘めてきた自分を舞台へと上げていこうとするような星回り。
作者は60代後半の歌人。掲句では、蝉(セミ)の羽化のうちに「渾身のしじま」を見出し、生命の根源に迫ろうとしています。
誰にも見届けられることのない長い地中生活を経て、蝉は夏になるといっせいに地上へ這い出し、羽化を遂げると、短くも晴れやかに生を謳歌してこの世を去っていきます。
シンボリズムにおいては、蝉は光と闇の循環的周期を象徴する生きものであり、中国では「含蟬(がんぜん)」といって死者を葬る際に死者の口に蝉のかたちをした軟玉製品を入れる風習があったそうです。
そして、幸運と拡大の星である木星が今年1年やぎ座にある今の状況は、やぎ座にとってまさに「光」を浴びるターンのど真ん中。
21日にやぎ座から数えて「まなざしの交錯」を意味する7番目のかに座で先月に続き2度目の新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が残りの人生でより輝いていくために、誰のどんなまなざしを必要としているのか、改めて明確になっていくはず。
静かなる変革
誰かを心から「敬う」とは、その相手の後ろ姿に心から「うなづく」ことができるということでもあります。それは簡単なようで難しく、なぜなら「絶対に正しいこと」など世の中にほとんどないように、目の前の対象や相手を疑う心を持たない人はほとんどいないからです。
だからこそ優れた師は、弟子に「それはなぜそうするのですか?」と聞かれた際に、ただ黙ってうなずいてから、説明をせずに無言を貫くのです。
それは「ああなってこうなって、こうなるんだ」と言葉で説明しようとしても、どれも正確には表現し切れないから。師として成熟してあるほど、不正確なことには黙ってしまうもの。しかし、それがかえって弟子に変革を引き起こす訳です。
そういう意味では、もしかしたら人間にとって最良の師とは「月」なのかも知れませんね。
満ちては欠けて、また闇から光に転じていく。その後ろ姿にうなづいていくこと、そして月の無言の教えを大切にすること。今週はこの2つのことを心に留めていきましょう。
今週のキーワード
月にならう