やぎ座
それは魂が軋む音
枯野に火を放て
今週のやぎ座は、「この枯れに胸の火放ちなば燃えむ」(稲垣きくの)という句のごとし。あるいは、失われつつあった激情をさっと取り戻していくような星回り。
眼前に広がっている枯れた草原に、もし私の胸に燃えさかる火を放ったなら、きっと勢いよく燃えるだろう、というのが大意。
恋の句ではありますが、それは甘やかなそれとは違って、絶望的状況にあることが伝わってきます。相手に妻がいるのか、それともただただ片思いにはまってしまったのか。
いずれにせよ、作者はそういう状況にあるのに関わらず、否、そういう状況だからこそ、相手へ向かう感情はより一層強くなっているのだろう。
状況の冷えに対する内面の熱の差が際立ちますが、気持ちが燃え上がって激情となっていくには、得てしてそういう「落差」が必要なのである。その意味では、もしかしたら作者は、そういう自分になりたくて、先の見えない恋に身を焦がしたのかも知れない。
27日(水)にやぎ座から数えて「無意識」や「忘れかけた思い」を意味する12番目のいて座で新月が起きていく今週のあなたもまた、掲句に詠まれた枯れ野のように燃え上がるための種火を、どこかからか見つけ出していくだろう。
みずから選び取られた孤立
相手の無理解など何するものぞ。否、むしろ無理解や願いの不成就を通してこそ詩人の目は養われる。
なぜなら人間とは、必然的に自分自身に対立するもの。
もし、中途半端に寄せられる周囲からの理解や願いの受容で自身を冷徹に裁きの対象にしていくことを妨げられてしまえば、自分のことを魂をもった人間だとは認識できないし、従って真の意味で自分を愛することもできないのだ。
死、不安、悲劇、不幸、病い―。
自分の中にそれらを見出すにつれ、あなたはその目に激情を宿していき、みずから選び取られた孤立のなかでこそ、何かとても大事なことが分かりかけていく。失われつつあったものを取り戻すとは、きっとそういうことなのだろうと思う。
今週のキーワード
否