やぎ座
吐息としての仕事かな
ほたるに俳句は作れない
今週のやぎ座は、「たましひのたとへば秋のほたる哉」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、自分が“人間”になっていくためには何をすべきか再確認していくような星回り。
前書きには「芥川龍之介氏の長逝を深悼す」とあります。
作者は芥川と直接の面識はありませんでしたが書簡による交流は行っており、雑誌に掲載された芥川の句をそうと知らずに賞賛したこともあったそうで、互いに敬愛する仲だったことが伺われます。
夏のほたるであれば、恋の相手を求めて明滅するいきいきとした生命感や華やぎもありますが、それが「秋のほたる」となると、しんと冷たく胸におちるような、まったく別の感慨が宿ります。
友の突然の死に触れて作られた掲句の「秋のほたる」にも、どこか孤独がにじんでいるように感じられます。
それは自死という決断をした芥川のそれとも、残された側の作者のそれともつかない微妙な線の上で揺れており、実際に作者はそれを母屋の背後に流れる川を飛ぶほたるの姿として見かけていたのかもしれません。
14日(土)にやぎ座から数えて「動き続けていくこと」を意味する3番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、誰かの代わりに全うすべき自分の仕事について、思いを新たにしていくことでしょう。
吐く息を大切に
芥川と蛇笏(だこつ)のことを調べていると、最良の友とはどんな相手なのだろうか? という疑問が湧いてくる。少なくとも、2人の場合は「息の合う」相手であった。それも、吐く息の方が合う相手。
生まれてきたその日から私たちはつねに息をしてきたし、やがて息を引き取るその日までそれは続いていく訳ですが、若い頃は特に「吸う息」の合う相手を求めやすいように思います。
「吸う」とは英語で「inspire」と表し、名詞形にすれば「インスピレーション」になります。
つまり、同じアーティストに影響を受けたり、似たバックグラウンドを共有できる相手をこそ最良の友と考えやすい。それが間違いという訳ではないのですが、必ずしも絶対的なものではないでしょう。
なぜなら、人間の生き様というのは、何に影響を受けたかよりも、周囲にどんな影響を与えていくか、ということによって規定されてもいくからです。
その意味で今週は、「自分という人間はこの世の何に寄与していこうとしているのか」という視点をできるだけ大切にしていきたいところです。
今週のキーワード
秋のほたる