やぎ座
タブーとニッチ
破るべきものが人を強くする
今週のやぎ座は、「むざんやな幾世活んと薬くひ」(溝口素丸)という句のごとし。あるいは、自分の価値を高めるための方便を、したたかに繰り広げていくような星回り。
江戸時代までの日本では、動物の肉を食べるのはタブーでした。しかし実際には、「薬」と称して鹿、猪、兎、牛などの肉が食べられていて、それを「薬喰い」と言ったのだとか。
おそらくこの句で薬喰いをしているのは、老人たちなのでしょう。ここまで生きてこられた事だってある意味で奇跡なのに、この上いつまで生き永らえる気なのか。
そのふてぶてしいまでのしぶとさと、生きのびるためになら何だってするのだ、という諦観は、やぎ座のあなたにとってもどこか馴染み深いものなのではないでしょうか。
今週は、そんなしぶとさやしたたかさを言葉を通して発揮していく時。
戦いの連続としての人生を、ここまで生き抜いてきたことの価値を信じて、伝える言葉やタイミングをしっかりと選んでいきましょう。
ニッチを攻めると社会は豊かに
また江戸時代には羅宇屋さんという職人がいて、「らうやー、らうやー」と町中を掛け声をかけてキセルの管を交換して回っていたのだとか。
販売や交換だけでなく修理と清掃も請け負っていたそうですが、それにしても煙管だけで飯が食えたというのはすごい社会だなという気がしますが、口上ひとつで生計を立てているのですから、さすが職人さんですね。
誰しも華やかな成功を収めることに一度や二度は憧れるものですが、皆が同じような成功を求め、画一化してしまった社会を想像すると、なんてつまらないんだろうと思ってしまいます。
反対に、羅宇屋さんという職業が商売として成り立っていて、その周辺にさらに他のニッチな職業の人が関連しつつ散らばっている社会のなんと多彩で贅沢なことか。
結婚にしろ仕事にしろ、互いの色や良さを活かしあい、価値を高めあえるような縁や場面をどれだけ持てるかということこそが、豊かであるということの基準なのかもしれません。
今週のキーワード
薬喰い