やぎ座
従う喜びの最中へ
自然に自分を浸潤させる
今週のやぎ座は、「下萌えぬ人間それに従ひぬ」(星野立子)という句のごとし。あるいは、自分の存在を、環境の中に心地よく溶け込ませていくような星回り。
春になると、枯れ草の下から真新しい草の芽が出始める。すると、それに従って眠っていた生き物もまた再び活動を始めるのだ。
掲句ではそうした自然界の法則に「人間」という一語を加えることで、調和と違和のあいだを通る細い透明な道を指ししめようとしているようにも思える。
もちろん、「人間」の中には作者である我(われ)も入っているはずだが、もし「われ」としたなら、ただの日常風景の客観描写になってしまっていただろう。
俳句で使われることの珍しい「人間」の語をあえて使っているがゆえに、「それに従ひぬ」の「それ」は自然の定めたルールにもなれば、おのれの肉体ともなり、はたまた恋愛感情の暗喩にもなるのではないか。
いずれにせよ、草に従って生きる人間の姿というのは、嘘のない謙虚さがあるし、何より美しい。そういう意味では、従うべきものを見出せた人は幸せだな、と。
4日(月)の立春に続いて5日(火)に新月をはさんでいく今週は、やぎ座のあなたもまた自分が従うべきものを周囲からそれとなく見つけていくことができるはず。
生命力を解き放つために
別の言い方をすれば、今週はこれからも自分が生きていくために、誰かを愛していくことができるか(愛されるかではなく)、ということが問われてくるのだとも言えます。
「われわれは生きて肉体のうちにあり、いきいきした実体からなるコスモス(大宇宙)の一部であるという歓びに陶酔すべきではないか。眼が私のからだの一部であるように、私もまた太陽の一部なのである。」(T・H・ロレンス『黙示録論』)
一般的には『チャタレー夫人の恋人』の作者として知られるロレンスがテーマにしたのは、近代社会の狭くせせこましい道徳の中でがんじがらめになった生命力を、偽善的な目標の拘束からいかに解き放っていくことできるかどうかでした。
そのためには、自分を取り囲むコスモスに自分をひたし、あるいは委ねてその喜びを身体いっぱいに感じていくことが一番なのだと思います。今週は、頭よりも身体の要求を最優先させていきましょう。
今週のキーワード
雄雄しき生命の輪舞