やぎ座
スローさのレッスン
眼光炯々
今週のやぎ座は、「猟夫伏せ一羽より目を離さざる」(後藤雅夫)という句のごとし。あるいは、対人関係に「スローさ」を持ち込んでいくような星回り。
猟師ではなく「猟夫(さつお)」で冬の季語。同じ意味の言葉だけれど、なんとなく「猟夫」の方が体温が伝わってくるようで近しく、そして生々しく感じられるから不思議だ。
狙っているのは雉などの山鳥か、鴨などの水鳥か。
いずれにしても、精神を眼前の獲物に集中させて、伏せて我慢強く‟その時”を待ち続ける眼光鋭いハンターの姿が浮かんできますが、その際大事なのは必ず狙いを定めるべき「一羽」を決めていくこと。狩猟においては「二兎を追う者は一兎をも得ず」が鉄則なのです。
そしてこのことは、今週のやぎ座においてもあてはめることができるでしょう。特に、「数打ちゃ当たる」的な効率主義を対人関係に持ち込まないように、注意深く「スローネス」を実践していくことが今週のあなたのテーマとなってくるでしょう。
いっそ「猟夫」になりきって、普段とは異なる速度で物事に関わったり、コミュニケーションを楽しんだり、自分や相手の熟慮のための余白や、関係性にどうしたらシンプルさをもたらすことができるか、ということについて目を光らせていくといいかもしれません。
師と弟子というもの
猟をする者にとって、獲物はありがたい恵みであると同時に厳しい師でもあり、ときに自分の弱さを鋭くあぶり出してくるのだそうです。
現代の日本社会というのはどこか父性の不在を感じてしまいますが、よき師として思い出される人に、たとえば夏目漱石がいます。
彼は若い弟子にあてて、自分の弱さをいかに扱うか、という問題について手紙にしたためているのですが、そこには後の『こころ』にも通じる師弟関係が垣間見えるのです。
「他人は決しておのれ以上遥かに卓越したものではない。また決しておのれ以下に遥かに劣ったものでもない。特別の理由がない人には僕はこの心で対している。」
「君、弱い事をいってはいけない。僕も弱い男だが弱いなりに死ぬまでやるのである。やりたくなったってやらなければならん。君もその通りである。」
「死ぬのもよい。しかし死ぬより美しい女の同情でも得て死ぬ気がなくなる方がよかろう」
これこそまさに、色々と悩みながらも、いい意味でわがままに生き切った漱石ならではの師としての助言といえましょう。あなたにとって師とは誰か、また師からどんな教えを受けとっているのか。
今週はそんなところへと気を向けていくといいかもしれません。
今週のキーワード
二兎を追う者は一兎をも得ず