やぎ座
寝息と呼吸
無意識の循環
今週のやぎ座は、「山眠るまばゆき鳥を放ちては」(山田みずえ)という句のごとし。あるいは、無意識のうちに下した決断に、意識的に乗っていこうとするような星回り。
「山眠る」は冬の季語で、もとは北宋時代の画家・郭煕(かくゆう)の『臥遊録』にある「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠 として滴たるが如し、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として睡るが如し」という箇所からきています。
ちなみに「惨淡」とは、うす暗い、物寂しいという意味で、枯木ばかりとなって冬眠しているかのような山の様子をよく表していると思います。
掲句では、そんな冬山がまるではちきれんばかりの弓矢のように「まばゆい鳥」を放っている光景を描いています。
表面的に見れば「静」の状態にある自然のなかに、「動」の営みを見出し、同じ光景の中に同時にそれを描き込んでいる訳ですが、まさにこうした静けさの中でのひと跳ねのようなドラマは、今のやぎ座にもっていこいのモチーフでしょう。
寝息をたてるように静かに、けれど大きな循環の中で必要なものを引き寄せ、また確かな歩みを踏み出していこうとしている。
今週はそんなどこか安らかで、厳かなタイミングとなっていきそうです。
私たちはだんだん元に戻っていく
先日亡くなった樹木希林さんのように死ぬ直前まで大きな仕事ができたり、あるいは「息を引き取る」ように亡くなっていける人というのは、やはり生きているあいだに懸命に無意識と向かいあい、投げ出すことをせずきちんと癒してきた人なのでしょう。
そしてこの「息を引き取る」というのは、「元に戻っていく働き」であり、この“もと”というのは、神様であったり自然であったり、つまり私たちがそこからやってきた大元の世界なのではないかと思うことがあります。
これは見方を変えれば、常日頃から吐く息のリズムやタイミングが合いやすい相手というのは、まさに同じところへ帰っていこうとしている相手なのだということになります。
あるいは、共に息を安らかに吐くことのできる仲というのは、引き取ってくれている側と引かれているこちら側がスムーズに繋がっているの証しなのかもしれません。
今週は、そうした自分をスムーズに引いてくれる大きな呼吸の中で、息を深く吐けるよう自然と調整していくことがテーマとなっていくでしょう。
今週のキーワード
山眠るとき、鳥飛びたつ