かに座
私は誰?
あなただあれ
今週のかに座は、「あなただあれなどと母いふ暑さかな」(竹内立)という句のごとし。あるいは、どうしようもない状況を前にして、思わず内側にある未知へと開かれていくような星回り。
ボケた人というのは「あなただあれ」を連発するのだという話を聞きますが、あれは文字通り相手の名前や正体をただしているのか。それとも、子供が「これなあに」と連発するときのように、正確な解答を求めているのではなくって、ただコミュニケーションのきっかけがほしいだけなのか。
いずれにせよ、ボケた母というものはもうじっと耐えるしか方法がないですから、そういう意味では掲句は「もうこれ以上どうしたらいいんだよ」と思わず弱音を吐きたくなるような状況の最たる例のひとつと言っていいでしょう。
ただ、そこまで追い込まれてみなければ、決して出てこない自分というものもあるのです。今週は秘密や盲点を超えたところにある、未知の自分を垣間見ていくことになるかもしれません。
自分の魂を養い育てる
ランボーはある手紙の中で次のように書いています。
「詩人になろうと望む人間の探求すべきことの第一は、自己自身を認識すること、それも全面的に認識することです。自分の魂を探索し、綿密に検査し、誘惑し、学ぶことです。自分の魂を知ったら、すぐにそれを養い育てなければなりません」
これは簡単なようでとても難しいことです。というのも、そうして育てるべき「自分の魂」とは同時に<まったく未知なもの>でなければならぬ、と彼は考えていたようですから。
自らの魂めぐる「未知」の領域を開けていくには、「秘密」か「盲点」が鍵になります。前者は他人は知らないけれど、自分だけは知っている自分を開示していくことによって。後者は自分は知らないけれど、他人は知っている自分について聴取していくことによって。
どちらかのトビラを開けていくことで、未知なる自分の魂と出会い、育てていきましょう。
今週のキーワード
ジョハリの窓