かに座
運命を迎え入れるための準備
準備のはじまりはじまり
今週のかに座は、「青草をいつぱいつめしほたる籠」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、ありあまる思いを胸に抱え、誰かを迎え入れる準備をしていくような星回り。
「ほたる籠」とは、ホタルを採った後死なせずに入れておくために、ホタルが普段生息している環境に似せて、適当に青草を敷いて水を含ませたものを言います。掲句では勢いあまって、青草を籠がぎゅうぎゅうになるまでいっぱいに詰め込んでしまったのでしょう。
子供ながらにホタルを思ってそうしたのだろうということは、伝わってきます。まるで親鳥が、まだ見ぬヒナを思って一生懸命に巣作りに励んでいるかのようでもあります。
それがみずからに待ち受ける運命への予感なのか、それとも本能の発動なのかは分かりません。ですが今週のあなたもまた掲句の子供や親鳥のように、体や心などどこかのレベルで待ち受ける現実への準備が始まっていくでしょう。
運命は盲目なれど
「目を凝らして注意深く観察すれば、運命を見分けることができよう。運命は盲目だが、見分けられぬものではないから」
フランシス・ベーコンのこの金言は、まさに今のあなたにおあつらえ向きと言えるでしょう。
ちなみにその後で、
「イタリア人はそれらのうち、ひとのほとんど気付かない二、三の点に注目し、みどころのある人物について、ちょっと愚直なところがあるということを他の条件とともに挙げている」
と続けているのは、ベーコン本人はイギリス人であることを考えると、人間臭くて面白いところですよね。
突然ドアを叩いてやってくる来客のように、運命は我々を翻弄します。けれどよく耳を澄ませば、その足音が嬉しげなのか怒気を孕んでいるのか、聞き分けることもできるし、身なりや仕草、表情で大体何をしに来たのか分かるもの。
運命は盲目なれど、自分のことをよく知ろうとしてくれる人間には、必ずこちらに分かるような合図を贈ってくれるのです。
今週のキーワード
器からつくっていく