かに座
仮面と素顔
言ってはならない言葉の重み
今週のかに座は、「明日もまた会社があると思うならお手元の資料をごらんください」(堀合昇平)という句のごとし。あるいは、これまで無自覚に繋がっていたものをわが身から切り離していくような星回り。
きわめてあぶない短歌だ。後半部分は社内の会議の場面で、資料に沿って説明を始めようという時に自然に声に出てくる言葉だが、問題は前半部分。これはけっして言葉にしてはいけない言葉だろう。
作者はIT企業勤務。そんなプロフィールもまたあぶなっかしさを助長しているように思う。
日本社会はとくに暗黙の了解というものを重視する社会であり、それをどこかで忘れることで安穏とした平和を演出するということが慣例のようになっている。もういっそプレミアムフライデーなどやめて、作者のようにうすら寒い演出や暗黙のルールに従わないでいいという日を作ってしまってはどうだろうか。
今週は、無駄に重いしがらみや退屈な慣習から自分を解放させてあげられるかということについて、一度真剣に考えてみるといいでしょう。
秘密をもつことの大切さ
『ユング自伝』の最後の追想の中に、上記のような今週のかに座に関連する話が出ていましたので、ここに引用しておきます。
「孤独な人ほど交わりに敏感な人はいない。そして、個々人がその個性を忘れず、自分と他人とを同一視しないときに初めて、真の交わりが生じるのである。われわれが何らかの秘密をもち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
今週は、最終的には「言ってはならない言葉」をどうにか呑み込みつつも、普段なんとなく周りに調子を合わせている自分と、自分の素顔とが癒着してしまわぬように、どうか気を付けてください。
今週のかに座へのキーワード
自己解放と秘密の深い関係