かに座
固まりくんとゆらめきちゃん
いかに力を振るうかではなく
今週のかに座は、「変化の術」と孫悟空のごとし。あるいは、人生というものは本質的に変化の連続であり、それを受け入れることは楽しいことでもあるのだということを思い出していくような星回り。
世の中には、まるでこれまで一度もそこを動いたことがないかのように、いつまでも石のようにじっと現状維持に固執する人たちがいます。そうしていた方が心地が良く、安全で、アイデンティティがゆらぐ心配もないのでしょう。
16世紀の中国・明朝の隠遁詩人、呉承恩が書いたとされる『西遊記』もまた、ひとつの石から話が始まります。有史以来一度も動いたことのない山頂の巨石から生まれてきたのが孫悟空でした。
ただ孫悟空は常識ばなれした力の持ち主ではあったものの、あまりに傲岸不遜だったため、お釈迦様に500年間ものあいだ山に閉じ込められます。ただ最終的には、変わり映えのしない生活に安住するのでなく、石がぱっかり割れるかのように、通りがかりの若い巡礼者を助けるという役割を引き受けることで、新しい自分を作り出す喜びを味わうにいたったのです。
孫悟空は山に閉じ込められる以前、不老不死の仙人に弟子入りして、さまざまな変化の術を習得していましたが、彼の最後の変化は、いかに力を振るうかではなく、いかに自分を抑えるかという節度を身に着けることでした。
そして、2月10日にかに座から数えて「小さな死」を意味する8番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな孫悟空のように、きっとまだまだ受け入れるべき運命があり、果たすべき役割や、応えるべき期待があるのではないでしょうか。
ゆらぎと流れとしての私
私たちは時として「身を固める」ことで、鉄の玉のような強固な自己同一性を獲得していこうとし、そうなることでどんな困難にもつぶれることなく、与えられた使命を全うしていくことができるのだと信じて疑わないようなところがありますが、今のあなたは、いわばそうした信仰が大いに揺らいでいきやすいタイミングなのだと言えます。
こうしたタイミングでは、ともすると「身を固める」ことを求められてガチガチになりがちな私は、ギリシャ語でいう「プネウマ」のような空気や息吹、ゆらめき、流れのようなものとして感じられやすくなっていくでしょう。
自然とあなたも、安定した状況や人間関係に居心地の悪さを感じたり、ここではないどこかへ吹き去っていく風のように、空気をかき回していきたくなるはず。その意味で、今週のかに座は「我慢」を禁句に、どこまでも素直になって心をのばしていくといいでしょう。
かに座の今週のキーワード
体が楽になるようによく息を吐いていくこと