かに座
心を耕す茶飲み友達
心臓を健康にするには
今週のかに座は、喫茶で養生という提案のごとし。あるいは、身体やそれが求める“味”やその調和ということをすべての基盤においていこうとするような星回り。
民衆的で革命的であった鎌倉新仏教の立役者と言えば、親鸞や道元などの名前が必ずあがりますが、臨済宗の始祖である栄西(えいさい)の名を挙げる人は少ないかも知れません。
しかし、栄西は中国から禅だけでなく茶を持ち帰って喫茶の法を伝えた人物でもあり、知る人ぞ知る日本の“茶祖”でもありました。なぜ彼がそれほどまでに茶に力を注いだのかは、栄西が禅と密教とによる仏教の総合化を目指していたことにヒントがありそうです。
男女の性的合一など性的な要素を仏教に持ち込んだ密教は、そのおおもとに身体への関心がありましたが、医書としても読まれた栄西の『喫茶養生記』という著作には、例えば次のような記述があります。
天が万物を造った中で、人を造るのがもっとも貴い。人が一生を過ごすのに、生命を守るのが賢明である。一生を過ごす源は養生にある。養生の術を示すと、(心・肝・肺・脾・腎の)五臓を健全にすることである。五臓の中でも心臓が中心である。心臓を健康にするには、茶を飲むのがいちばんよい方法である。
ここにもやはり身体への深い関心がありますが、これは彼が“救い”を追求する仏教というものを心だけのものではなく、身体を含む生活文化全体に関わるものであると考えていたことが如実に表れています。
1月26日にかに座から数えて「等身大の身体性」を意味する2番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、「いかに自己価値をあげられるか」ということを根本的なところから実践していくべし。
養生の秘訣
「カルチャー(文化、教養)」の語源が「耕す」を意味するラテン語「colore」に由来するように、精神的な豊かさは柔らかな大地の上にこそ実るもの。江戸時代を代表する俳人・与謝蕪村(よさぶそん)は、ちょうどそんな光景を俳句にしてくれています。
畑うつや うごかぬ雲も なくなりぬ
田を返し、土をいじっているうちに、さっきまで垂れこめていた暗雲がいつの間にかなくなってしまった。ただそれだけのことですが、蕪村はこの句を再興した芭蕉庵で句会を開いた日に詠んだのだそうです。句を詠むことを通じて芭蕉の精神を汲んでいく行為は、蕪村にとって心を耕す畑仕事であり、どんな悩みや苦しみも晴らしてくれる養生の秘訣だったのでしょう。
逆に心が耕されないと、人ってどんどんトゲトゲしくなるものです。今週のかに座もまた、できるだけ一緒にいると心が耕されるような茶飲み友達と時間を過ごしていくべし。
かに座の今週のキーワード
互いの精神を汲みあえる誰かと茶を飲むこと