かに座
嘘と優しさとわたし
嘘をついてもいいじゃないか
今週のかに座は、嘘を守り続ける勇気。あるいは、自分に足りない勇気を何とか育みながら、他人に必要な嘘をついていくような星回り。
正直に何でも話した方が結果的にうまくいくし、保身や楽をするために小さな嘘をつくと、その嘘を成立させるために別の嘘をどんどんつかなくてはならなくなっていって、結局自分を追い詰めることなる――。
私たちの多くは親や先生、上司たちにそう教え込まれ、いつしか自分が発した言葉に嘘はないと信じこむことが、唯一の自分を守る方法となっていくのかも知れない。しかし、果たしてこれは本当だろうか?
少なくとも世の中はそんなにシンプルにはできていないし、人間はそこまで強くもない。したがって必ずしも嘘をついた方が楽な訳ではない状況だって多いはずだ。例えば、自分がついた嘘によって、誰かが救われることに気が付いている場合はどうか。
正直に話せば、死んだらどうなるのか実際に体験した訳ではないから確証はない。けれど、浄土に極楽、地獄や輪廻を信じることで、やっと苦しみに満ちたこの世を生ききっていくことができるという人がいる限り、それを支えるのは嘘を守り続ける勇気に他ならない。
その意味で、19日にかに座から数えて「自由なコミュニケーション」を意味する11番目のおうし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、どうせつくならなるべくやさしい嘘をついていくべし。
なぁ、俺はあいつらベトコンたちに何の恨みもないんだよ
1966年3月、報道陣に囲まれたモハメド・アリは自身が放ったこの一言をきっかけに、徴兵拒否とベトナム戦争への表立った反対表明のため、ヘビー級のチャンピオンベルトを剥奪され、ボクサーとしての全盛期を棒に振るだけでなく、その地位と何百万ドルものお金を失い、借金苦にまで追い込まれました。
徴兵を回避した罪で有罪判決を受けてからも、彼は法廷闘争のかたわら階級差別と人種差別を糾弾する社会運動を続け、メディアの大多数による悪意ある報道の中で「金持ちの息子は大学に行き、貧乏人の息子は戦争に行く。そんなシステムを政府が作っている」と徹底抗戦の構えを取り続けたのでした。
彼の発した「蝶のように舞い蜂のように刺す」ような言葉や振る舞いは、社会問題についてはっきりと自身の意見を述べるプロアスリートの先駆けであり、その言葉が彼の正直な気持ちであったかどうかはさておき、50年以上経過した今でも彼ほどその奔放な言動で大きな社会的インパクトを残したアスリートは他にいないでしょう。
今週のかに座もまた、そんなアリの後ろ姿に少なからず自分自身を重ねてみるといいかもしれません。
かに座の今週のキーワード
「自分が発した言葉には嘘はない」はずがない