かに座
語れよ語れ
最後の告白のように
今週のかに座は、死後に閻魔の前に立たされたかのごとし。あるいは、どこにたどり着くのかも知れぬまま話すのがやめられなくなるような星回り。
閻魔の前に立たされた人間のするべきことはただ一つ、最後の告白である。何もかも語りつくすことで、みずからに必要な決定的な何かを取り戻そうとでもするかのように、そこではみな、藁にもすがるような思いで、今まで言葉にしたことさえなかったような自身の心の奥の奥のもっとも奥底まで言葉にしようとするのです。
では、そんな決死の告白の立会人たる閻魔とは誰なのか。そもそもインドのヴェーダ神話に由来する閻魔(ヤマ)は、最初の人間であり、それゆえ最初の死者となり、その後に続く者たちのために行くべき道と場所を見つけていったことで、死者たちの王となったと云われています。つまり、閻魔とは必ずしも地獄の“審判者”である訳ではなく、他界へと渡っていく人間の魂の先導役であり、正直に向きあえれば、これ以上ないほどの良きガイドとなってくれる存在でもありました。
とはいえ、自分の身に起きたことを語りつくすということは、想像以上に難しいことです。自分の口が語っていることを、自分でも信じられないような気がしてきた途端、急に力尽きたように言い淀み、生々しかったはずの記憶さえ、言葉にされる端から白々しく色褪せ、脆くも崩れ去っていく。そういうことはざらにありますし、逆に言えば、本当の告白とは、そうした頑なに口をつぐんでいた沈黙を破った先にやっと辿り着くことができるもの。
同様に、18日に自分自身の星座であるかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでついぞ破られることのなかったあなたの中の沈黙が不意に破られていくことになるかも知れません。
生の醍醐味に寄り添う
ひとりの人の後ろには、いろいろな人の運命が交差していて、しかしだからと言って、やっぱり他人ですから、関わっている相手がどんな人間なのか、どんな運命なのかは、みなつかみ切れないまま、うすぼんやりとしています。
そのことを真面目に考えすぎると、気味が悪くなってくるかも知れませんが、そもそも他人なのですから、理解できてなくて当然なのだとも言えます。
ひとりの人間が自分の運命について語りだせば、その親や祖父祖母、兄弟姉妹、友人、恋人、同僚、上司、顔も知り程度の知り合いなどが、さまざまにその人の像を浮かべ始めます。分からないのは当然ことながら、この世に生きているということの醍醐味は、そうやって生きた交流を通して、互いの運命を明確にしていくことにあるのだとも言えます。
今週のかに座は、冷静に淡々と、ユーモアとシリアスのあいだに立って、そうした生の醍醐味を味わい、寄り添い、語っていくべし。
かに座の今週のキーワード
自分にとっての閻魔と向き合う