かに座
ワナビー匠
日本の伝統的な才能観
今週のかに座は、「石の乞わんに従え」という教えのごとし。あるいは、「才」と「能」とのあいだを最適化していこうとするような星回り。
中世の庭師のための指南書『作庭記』には、庭石を庭に配置するときは、石が潜ませている「こうしてほしい」という声を聞きなさい、その声に従いなさい、という教えがありました。
そうすれば、庭と石との案配がおのずから決まってくる。そのことを会得しなさい、という訳ですが、これは日本の職人が大切にしてきた「才能」というものの感覚をよく伝えてくれているように思います。
それは簡単に言えば、「才能」というのは「才」と「能」の二つが組み合わさったものであり、「才」とは庭師や大工など人間の側がもっいている技術や経験のことで、「能」は木や石や鉄などの素材が持っている潜在力のこと。
つまり、「才」とはあくまで「能」をいかし、はたらかせることで初めて意味をもつのであって、こうした才能観は現代の企業文化において奨励されるスキルアップやタレント(才能)など、人間の側にそなわっているものだけを重視する考え方とは明らかに異質なものと言えます。
11月5日にかに座から数えて「型破り」を意味する5番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、型にハマった金太郎飴のようにならないためにも、存分に使いたいと思える道具や素材をまずはじっくりと選んだり、向き合っていく時間を確保していきたいところ。
「在る」と「成る」
例えば、ドラマとは劇場や台本があって初めて成り立つものでは決してありません。ドラマが演じられると、そこが劇場になり、しゃべった言葉が台本になって続きが書かれていく。つまり、ドラマというのはどこかに落っこちて「在る」のではなく、「成る」ものなのです。
逆に言えば、劇場になりたがっている街へおもむき、そこで抑えがたいエモーショナルな部分に光を当て、何かしら言葉に乗せていくとき、ごく当たり前の日常がそのままドラマに成っていく、ということでもあります。
今週にかに座の人たちは、そうした「能」と「才」とが自然に結びついて、流れを変えていくような爆発的な力強さがどこからか湧いてくるかも知れません。いつでも始められるように、心してください。
かに座の今週のキーワード
汝が成るところに神は在る、そここそが聖地である