かに座
こわいこわいはとんでいけ
サヴァイブのお守り
今週のかに座は、鶴見済『完全自殺マニュアル』の教えのごとし。あるいは、生存への意志をあらためて引き出し、受け取っていこうとするような星回り。
1993年に刊行され、あらゆる自殺の手段を網羅し取りあげたこの本は、十代から二十代を中心とした読者層に大反響を呼び、100万部以上を売り上げましたが、その「前書き」には次のような有名な一節があります。
これでやっとわかった。もう“デカイ一発”はこない。22世紀はちゃんとくる(もちろん21世紀はくる。ハルマゲドンなんてないんだから)。世界は絶対に終わらない。ちょっと“異界”や“外部”に触ったくらいじゃ満足しない。もっと大きな刺激がほしかったら、本当に世界を終わらせたかったら、あとはもう“あのこと”をやってしまうしかないんだ。
つまり、自分から死んでしまうしかない。そう促しているかのような一文ですが、本書の「あとがき」を読むと、著者の意図はそれとは別にあったのだということがわかります。
「イザとなったら死んじゃえばいい」っていう選択肢を作って、閉塞してどん詰まりの世界の中に風穴を開けて風通しをよくして、ちょっと生きやすくしようっていうのが本当の狙いだ
それから30年近くたって、「いつ自分が死んでもおかしくない」という想像力の働く状況がここまで一般的なものになるとは、当時誰も想像していなかったことでしょう。
22日夜にかに座から数えて「恐れの克服」を意味する8番目のみずがめ座で迎える満月から始まっていく今週のあなたもまた、生きづらい世の中をサヴァイブしていくための基本的な構えを確認しなおしていくべし。
生イコール死
死後の世界などないと考える人は多いように、人生に裏や影などない、もしくはない方がいいのだと普段私たちは思いがちですが、実際はどうなのでしょうか。死後の世界や、人生に裏や影が存在すると考える方が、少なくとも私たちは謙虚でいられるように思います。
ここで思い出されるのが、ミヒャエル・エンデの『モモ』のワンシーン。主人公モモが仙人のごときマイスター・ホラ(時の司)に向かって、「あなた(時間=生)は死なの?」と問うのですが、マイスター・ホラはそれに対して何と答えたか。いわく、
もし人間が死とはなにかを知ったら、こわいとは思わなくなるだろうにね。そして死をおそれないようになれば、生きる時間を人間からぬすむようなことは、だれにもできなくなるはずだ。
この後、モモは死について、「わたしはこわくない」と言うのです。もちろん、実際にはここまで一足飛びにはなかなかいきませんが、そうありたいと願うことは決して無駄なことではないでしょう。
かび座の今週のキーワード
「いつ自分が死んでもおかしくない」