かに座
真実一路
いずれ滅びゆく身として
今週のかに座は、「女陰の中に男ほろびて入りゆけり」(堀井春一郎)という句のごとし。あるいは、カオス(自然)に取り囲まれたコスモス(生命)。
まず、「ほろびて」の一語が切ない。人間は誰しも「女陰」より生まれ、「女陰」へと帰っていく。けれど、一度そこから出てきてしまえば、そう簡単には帰れないのがこの世の定めというもの。
だからこそ、男はそこに執着もすれば、狂いもする。人一倍の働き者にもなれば、女にしがみついて早死にする者さえいる。どれが高等で、どれが劣っているなんてことはないのだ。彼らはみなそれぞれの仕方で女陰に戻らんと「ほろびて」いっただけ。
作者の場合は、たまたまそのうちの最後になってしまった訳ですが、それを悲劇と呼ぶか喜劇と呼ぶかは距離感の取り方次第であって、いずれにせよ、作者はただそこへ突っ込むだけの男の愚かしさのほどを、身に沁みて分かっていたはず。
10日に自分自身の星座であるかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、いずれは滅びゆく身として、それゆえにこそ一心に美と秩序とを求めていきたいところ。
いのちのめざめ
宗教学者の鎌田東二は「別れと目覚め」というエッセイの中で、生前から坊さん嫌いを公言していた義父の葬儀を、悩みつつ仏式から神式に変え、自分自身が斎主となって執り行った体験から、ある時ふいに次のような言葉を思い浮かべたそうです。
わかれとは
いのちのめざめ
めざめることの いたみ
別れはつらい。なぜなら、それは一体感の喪失であり、自身を取り囲んでくれていた関係性の変化であり、どんなに兆候があろうとも決定的な関係の切断であり、痛みであるから。ただ、そうであるがゆえに、必然的に今後も自分が生きていくことの問いかけと諦めの観念を呼び起こし、その意味で痛みを伴う目覚めなのでしょう。
その意味で、今週のかに座は、そうした出会いと別れを通してしか成長し目覚めることのできないみずからの宿業のようなものを改めて痛感していくことになるはず。
ずっとこのままでいられたら、という思いを強く抱くほどに、そうした目覚めというものもまた、どこかしら必然性を帯びてくるものなのではないでしょうか。
かに座の今週のキーワード
女陰とは必然の女神