かに座
並外れたことを行っていく
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
魂の沈潜
今週のかに座は、「筆を擱く花ぐもりにはやや暗く」(皆吉爽雨)という句のごとし。あるいは、かすかな違和感を見逃さず的確に反応していこうとするような星回り。
「筆を擱(お)く」とは、文章を書き終える、ないし書くのをやめること。また、「花ぐもり」とは春に花咲く時期のくもった天気の意ですが、通常は雲が低く垂れこめるほどではなく、比較的明るい曇り空を指します。
ただ掲句は「やや暗く」とあるので、いくら日が永くなった春といえども、気がついたらすっかり日が暮れていたのでしょう。逆に言えば、それほどまでに一心不乱に筆をとっていたはずですが、何を書いていたのかについては一切説明はありません。
ただ、そういう曖昧さをも包み込む、どこか「のっぱらぼう」な時間の流れが春という季節にはあって、もしかしたら作者はそれにふと違和感を覚えて筆を擱いたのかも知れません。
区全体を通して何か事が起きている訳ではなく、表面上は穏やかですが、そこには素通りできない沈潜があり、深い含蓄を感じさせますが、それは五十歳に達した作者の年齢がなせるわざでもあったように思います。
12日にかに座から数えて「社会への望み」を意味する10番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分がこれまでいた流れにどこかで違和感を覚えることがあるかも知れません。
良心の疼きに反してはならない
彼がいまやっていることは、すべて立派で、道義的なことだ。——しかし彼はそのことに、良心の疼きを覚えている。なぜならば、並外れたことを行うのが、彼の使命だからだ。(ニーチェ、『喜ばしき知恵』)
偉大な業績を残した人物というのはしばしば生きているうちに賞賛者をほとんど(全くではない)得ないように、みずからの良心のみに従い続けるというのも、確かに並外れた魂の持ち主に共通して垣間見えるすぐれた資質と言えるかも知れません。
もちろん、皆が皆、そうした魂の在り方を踏襲し続ける必要もないでしょうし、それだけの機会や能力に恵まれている訳ではありませんが、いずれにせよここで大事なことは、その時代の社会が設定している良し悪しの基準など、取るに足らないちっぽけなものだということです。
やりたいことがあるならば、それが‟正しい”かどうかなど、気にする必要はないのです。ただ、そのやりたいことのの重みをみずからの魂において引き受けつつ、実現に向けて邁進していくべし。
今週のキーワード
遠慮なく、躊躇なく