かに座
自分を発見するために
芭蕉と一茶
今週のかに座は、「秋立つやあつたら口へ風の吹」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、遠くにある人のことを急に身近に感じ始めるような星回り。
「秋立つ」は立秋のことなので、厳密なタイミングとしては一カ月ほど前にあたりますが、ちょうど今頃になってようやく体感も追いついてくるはず。また、「あつたら」は「あたら若い命を」の「あったら」のことで、もったいなくもの意。
滑稽俳諧を特色とした一茶は、風雅の誠を追求した芭蕉の一派にはじめ所属したものの、みずからの個性に目覚めると、そうした路線から外れていきました。とはいえ、掲句を詠んだ一茶の頭には芭蕉の有名な「物いへば唇寒し秋の風」の句のことがあったのではないでしょうか。
芭蕉の唇を寒からしめた秋風が今年もようやく吹き始めた。同じ風が自分の口に吹いて入ってくることの、なんともったいないことか。そんな風に、ここでは作者は口数多き自身の身をどこか偉大なる先達である芭蕉と比較することで反省しているのかも知れません。
その意味で、9月2日にかに座から数えて「先達の教え」を意味する9番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ふと頭に浮かんできた人と自分とを重ね合わせることで何がしかの気付きを得ていくことができるはずです。
芸術と人付き合い
存在してくれているだけで、なぜだかありがたい。そう思わせるものには、あなたの魂の片割れが潜んでいます。
例えば、そういうものにお金を払うという行為は、単に消費や浪費や経済的合理性ということを超えて、もっと「自分自身」を感じたいという衝動が潜んでいますし、そうした感覚はあなたが「自分は誰と付き合っていくべきか?」という問題を考える際にも、大変重要なヒントを提供してくれます。
自分を知らず、自分に鈍感な人というのは、他人と付き合うということの根幹を見誤るのです。
芸術が必ずしも何かを創るばかりでなく「発見していく営み」だとすれば、その目的語に当たるのは常に自分自身ですし、自分を発見するのが上手な人で、付き合うべき相手を間違えている人というのはまず見たことがありません。
今週は、先達であれ、師であれ、友人であれ、パートナーであれ、芸術であれ、そういう相手やモノを有象無象の中から見つけて、そこから自分自身というものをひとつ感じていきましょう。
今週のキーワード
魂の片割れ