かに座
正しくなんてなくていい
「かげろふ」を飼う女
今週のかに座は、「裏山にかげろふを飼ふ女かな」(間村俊一)という句のごとし。あるいは、まだよく価値が定まっていないものこそを大切にしていくような星回り。
「かげろふ」とは、一般的には薄羽をふるわせるようにして飛ぶ昆虫のことだが、おそらく掲句の中では蜉蝣(かげろう)や蜻蛉(とんぼ)の意味ではないのだろう。というより、それでは説明文を聞かされているようでまるで面白くない。
水蒸気が蒸発するとき、空気の流れがかき乱れ、遠くの対象物が揺らいで見える「陽炎」、それを女が育てていると、生き物のごとく表現するところに俳諧としての軽みがあるのだ。
同時に、「かげろふ」という語に託された不思議な命のイメージが、男が求めても容易には手の届かなそうな妖しい女性像とあいまって立体的に立ち上がってくる。
4月1日に自分自身の星座であるかに座で上弦の月("型破り”のタイミング)を迎えていく今週のあなたもまた、自分にとっての「かげろふ」を見出すなかで、自画像そのものを書き換えていくことが一つのテーマとなっていくだろう。
まじめとふまじめを行き来する
例えば行政や教育の世界などでは、何をするのでもその動機や目的、何より手段の「まじめ」と「ふまじめ」が峻別され厳しく問われていくけれど、芸事の世界などでは、その境界線は限りなく曖昧になっていく。
そもそも、口笛を吹いたりするのに、「まじめ」な動機など問われても答えようがないし、たとえ動機がどれだけ不純でふざけたものであろうと、美しく奏でられたメロディーによってそれらすべては棚上げされてしまう。
そうして美しいメロディーを奏でるのに必要と判断したならば、どれだけ不純でふざけたものであろうが、手続きの上での"正しさ”に囚われる必要はないのだ。
逆に、そこですっかり魂を燃え上がらせられるよう、絶えずまじめとふまじめを自由に行き来し、「動機を作り出し続ける」べくモチベーションを引きあげていくことこそが大事になってくる。
特に、不純な動機は燃費がいい。それらを自身に、または周囲に対し上手に作っていけるかどうかが今週のキモとなっていきそうだ。
今週のキーワード
陽炎の増幅