かに座
叫ぶべし人間
うねりそのものとなる
今週のかに座は、浪花節の「唸り」のリズムのごとし。すなわち、身もだえするようにして自身の根底にある悲しみを表白していこうとするような星回り。
『詩歌と芸能の身体感覚』という本の中で、芸能評論家の朝倉喬司は浪花節的なものの特徴について、次のように述べていました。
「原型らしきものが出来たのが江戸の文化文政期と言ってもいいのでしょうが、社会的には最下層部分から立ち上がった。「非人」と言われた人たちとか、願人坊主とか、浮浪化した山伏というか、大道でいろいろな芸能要素がカクテルされて、そこでずっと芯に残ってきたものがあって、それが「唸り」ということだと思うんです。」
つまり、社会の下層にいた庶民の生きるエネルギーが、闊達さを身上とした芸能を通して集団的・歴史的に凝集し、説法とも煽動ともつかない危険なリズムへと変換されたものこそ、浪曲という古典芸能の根底にあるリズムの芯であり、それは言わば身もだえするような人情のうねりなのでしょう。
そしてそうした「唸り」とも「うねり」とも表されるリズムは、奇しくも今のかに座の人たちにも深く宿りつつあるもののように思います。
13日(月)から14日(火)にかけて、かに座と対面のやぎ座で太陽と土星と冥王星が正確に邂逅していく今週のあなたもまた、これまで胸の奥に秘めてきた思いや情念の固まりが時を得てほとばしり、誰かどこかへ目がけて解き放たれていくことになっていくかも知れません。
わが身のデッドスペースを知る
誰かにそばにいて欲しい、支えてほしい、活力を注いでほしいと願うのは、人間にとってごく当たり前の要求。できればこの世の果てまでそうして欲しいとつい思ってしまうのが、人の業というもの。
けれど、もしかしたらあなたの心や体には、いまだ吐き出しきれていない願いや思いを押し込めて見えないようにしている、自分でも忘れてしまったか思い出せなくなっているデッドスペースがあるのかも知れません。
そして、その戸を一度開けてしまえば、雪崩のように積年の思いや今まで隠れていた感情が止めどなく湧いてきては、それを吐き出さずにはいられなくなるような。
今週はいわば、それくらいのわだかまりを一気に放出していくような、決定的なタイミングとなっていくことも十分にあり得るはず。人情の深さや、狂おしいような思いに、思わず身をよじる。
今週は、そんな痴態を自分に許してあげるだけの余裕をもっておきたいところです。
今週のキーワード
中山みきの「おふでさき」