かに座
生活に文化を
創造的空っぽ
今週のかに座は、エンプティネス。あるいは、みずからの過剰な欲望や混濁した感情を“剪定”していくような星回り。
グラフィックデザイナーの原研哉は、自身の創作活動において大事にしている概念として、「エンプティネス(空っぽさ)」を挙げています。これは禅仏教などが言っている「空(くう)」とも、「無」とも違っていて、イマジネーションを受け入れる「創造的な器としての空っぽ」ということを言っているのだそう。
つまり、色々なイマジネーションを受け入れることをじっと待機している状態のことです。
また、エンプティネスは、そもそもの意図や情報をそぎ落として何もないものの方がいい、簡素さに伴う余白が人々の情感や情緒を受けれ入れる余地になって、心に寄り添うものとなり、かえって豊かさを感じさせてくれるという考え方がその前提としてあります
こうした考え方は、西洋が“シンプル”を発見するずっと以前の15世紀頃に由来する日本独自の文化的資産とも言えるかも知れません。
かに座から数えて「他者や社会との関わりにおいて出来た汚濁の浄化」を意味する6番目のいて座へ、22日(金)に太陽が移っていく今週のあなたもまた、そうした「エンプティネス」へと思い切って立ち返ってみるといいでしょう。
心を器にする秘訣
そもそも「カルチャー(文化)」の語源が「耕す」を意味するラテン語「colore」に由来するように、精神的な豊かさというものは柔らかな大地の上にこそ実るもの。江戸時代を代表する俳人・与謝蕪村(よさぶそん)は、ちょうどそんな光景を次のような俳句にしてくれています。
「畑うつや うごかぬ雲も なくなりぬ」
田を返し、土をいじっているうちに、さっきまで垂れこめていた暗雲がいつの間にかなくなってしまった。ただそれだけのことなのですが、蕪村はこの句を再興した芭蕉庵で句会を開いた日に詠んだのだそうです。
句を詠むことを通じて芭蕉の精神を汲んでいく行為は、蕪村にとって心を耕す畑仕事であり、それは「エンプティネス」を体現していく秘訣でもあったのではないかと思います。
逆に、心が長らく耕されないでいると、人間どんどんトゲトゲしくなるもの。その意味で今週は、黙々と好きな作業に没頭する時間だったり、自身のケアに当てる時間を確保していきたいところです。
今週のキーワード
心を耕す