かに座
力強さを取り戻していく
無言の奔走
今週のかに座は、「夫人よ炎天の坂下でどぎまぎしてよろしい」(中塚一碧楼)という句のごとし。あるいは、なまめかしく動き回っていくことで、大切なものが蘇ってくるような星回り。
「夫人よ」という呼びかけにのっけから意表を突かれる一句ですが、「どぎまぎして」いるのは対象となっている夫人ではなく、むしろそれを捉えている作者の方でしょう。
「炎天の坂下」というのも、みずからの鋭敏さを持て余している男が行き着く果てとしてはもっともな場所であり、そこでエロティックでありながら、どこか不思議な趣きの無言劇が繰り広げられている訳です。
むろん、どこまでいっても持て余しているだけなら危ない変質者ですが、最後の「よろしい」に救いがある。
それはごく主観的な納得感かもしれませんが、とにもかくにも動き回っていく中で、火のついた衝動に後から身体が馴染んできたのかもしれません。
その意味で、30日(金)にかに座から数えて「よみがえり」や「復活」を意味する3番目のおとめ座で新月を迎えていく今週は、掲句の作者同様に、右往左往としながら自然と一線を越えていくうちに、自分の中で“新鮮な生命力”がよみがえってくるのを実感していくことができるはず。
本来の意味で「遊女化」する
例えば、14世紀以前の日本では、「遊女」たちは年貢を納めることを断固として拒否し、手に職を持って遍歴していった職能民であり、聖なるもの、すなわち人の力をこえた神仏との結びつきに支えられた高貴な存在として社会の中で位置づけられていました。
そこでは「好色」もひとつの芸能であり、神仏にささげられた舞や歌と同じようなものとして捉えられていたようです。
逆に言えば、神仏とのつながりを断たれた頃から、遊女は男の穢れをうける、穢れた存在(=ビッチ)と見なされるようになっていったのだと言えるかもしれません。
つまり、本来の遊女(≠ビッチ)とは、大抵の人が自分を守る為に張りめぐらせている固い「殻」を脱ぎ棄てさせ、エロやロマンを媒介にして、人々を自己解放させていった宗教者でもあった訳です。
今週のあなたもまた、そんな風に遊女化していく自分を演じてみるのもいいかもしれません。
今週のキーワード
エロスとカオス