かに座
最後に残るものは何か
砂漠世界で浮き彫りになるもの
今週のかに座は、『少年と犬』(1975、アメリカ)という映画のごとし。すなわち、「食欲」と「性欲」以外のことにも、改めて喜びを見出していこうとするような星回り。
8月8日(木)にかに座から数えて「自己表現」や「表出」を意味する5番目のさそり座で上弦の月を迎えていく今週は、結局のところ自分にとって心から愛せるものは何なのかということが大切なテーマとなっていきそうです。
その意味で、開始冒頭から「第四次世界大戦は5日間で終わった」というショッキングな宣言から始まる『少年と犬』は、すべてが灰燼に帰した何もない砂漠世界という極端な設定によってそうしたテーマがまさに浮き彫りにされていく映画なのだと言えるでしょう。
砂漠のあちこちに埋まっている缶詰を求めつつ、主人公の少年ヴィックと犬のブラッドは放浪生活しているのですが、彼らの関係はペットと飼い主ではありません。放射能の影響か、ブラッドは高い知性や戦争前の世界についての多くの知識を有しており、完全にブラッドの方が「先輩」なのです。
彼は、ヴィック少年が「食うこと」と「セックスをすること」しか考えていないことに半ばうんざりしつつも面倒を見ており、かわいい女の子の尻を追いかけて突撃した豊かな地下世界が、実は歪んだ奴隷社会のとんだディストピア(そしてこれは現代社会への皮肉でもある)だと分かった末、少年がようやく「自分の最良の友は犬だ!」となったところでこの映画は終わっていきます。
願わくばそんな少年のように、側にある大切なものに気付いていきたいところです。
心の癖は子ども時代の形成される
例えば、凶悪事件の記録などを調べていると、加害者がまだ児童期のころに形成された心の癖が、大人になってからおかした犯罪と強く関連している事例は非常に多いことに気が付きます。
しかし一方で、そうした分かりやすい事例に限らず、多くの人間にも同じように「心の癖」が存在していて、みな多かれ少なかれ歪んだり抑圧されたりしているのだ、ということも忘れてはいけない点でしょう。
裁判員裁判では、長文の鑑定書は必要なく、誰にでも分かる平易な言葉で短くまとめられます。
「子ども時代の不幸は、大人になったら自分の力で対処すべき」と考えている方が裁判員となることもあるでしょう。しかし、歪んだ眼差しの交差は、真実を闇に追いやるのだということは、つねに念頭に置いておく必要があります。
結局のところ、自らの心の真実は、自分しか知ることができませんし、どんなに適切な手助けを受けることができたとしても、最後のところでは自分の手で救うしかないのです。
その意味で今週は、果たして自分の心にどこまで誠実に向き合っていけるか、ということも問われていきそうです。
今週のキーワード
カタルシス