かに座
何を食べるか、それが問題だ
強い生命力を宿すため
今週のかに座は、「猿も来よ桃太郎来よ草の餅」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、生き延びるための決断として「長い物に巻かれ」ていくような星回り。
軽薄な処世術として語られがちなことわざではありますが、ただ「長いもの」とはなにも権力者や時の趨勢だけを指している訳ではなく、もっと根源的なところで強大な生命力のことを指している場合もあるはず。
例えば掲句。古くから草の香りには邪気を祓う力があると信じられ、それを栄養価の高い餅に練り込んだ草餅は、ある意味でいのちの春を保証してくれる「長いもの」に他ならないのだとも言えます。
さあ、草餅だ、猿もこい、桃太郎もこい、みんなこい。そんな一茶の命あるものへの力強い呼びかけこそが掲句の妙味でしょう。
ちょうど今のかに座あなたもにもまた、そうした呼びかけに応えていくことが必要であり、その意味で20日(水)におとめ座で満月を迎える今週は、プライドや羞恥心をかなぐり捨ててでもそれにすがっていく絶好のチャンスとなりそうです。
食べる=交わる
例えば私たちが路上でネコと出くわし、テレビや動物園などでクマを見ることはそう珍しいことではありません。
とはいえ、私たちは動物を愛玩の対象や子供のちょうどいい遊び友達とは認識すれど、どこかで自分たちとは断絶した、異質な存在として見なす時代を生きています。
しかしすこし時代を遡れば、狩猟採集を生きるための主な手段としていた時代において、ある特定の動物や植物(トーテム)を、子供たちならず自分たち種族全体の守護神、そして祖先として信仰していたことをここで思い出されたい。
そこには自分が生きるために、互いの命を殺し、喰い、交わっていた原初の連帯があり、自然な、したがって無尽蔵の連続性や一体感がありました。
そうした世界では、食べること1つとってみても、「自分は何と一体になりたいのか?」という問いかけであり、それへの応答であり、祈りであったのです。
今週は身体の声によく耳を澄ませ、自分の欲望と他人の欲望の模倣とをしっかり区別しつつ、前者を見極めていくといいでしょう。
今週のキーワード
赤坂憲雄『性食考』