かに座
敗北力が試されるとき
循環のための儀性
今週のかに座は、さながら<To lose to gain>という言葉のよう。すなわち、「失うことこそが得ることである」という思想を、わが身をもって実践していくような星回り。
近代日本では「勝てば官軍」という考え方が基本となっていますが、今でも忠臣蔵の赤穂浪士や白虎隊、源義経そして新撰組などが大変な人気をもって日本人に愛されているのは、やはり「国破れて山河在り」といった敗北の美学が根底にあるからではないでしょうか。
3・11以降の日本というのは、まさにそうした「敗北力」が試されてきたとも言える訳ですが、どうも日本人は「敗北力」のなさを露呈してきたように思います。
「勝つ」方に舵をきって、それを一番効率的にやれる方法を見つけて、みんなでそれに乗っていこうとしてきた。失敗に蓋をして、すぐに前を向いて歩き始めてしまった。
そうじゃないだろう。もっと自分たちのしでかした失敗を受け止め、繰り返された負けを拾って、しっかりと失敗の型をこしらえてから、成功というものを考え直すのでなければ、3・11以前の日本が抱えていた閉塞感は本当の意味で払拭されていかないのではないか。
7日にいて座で新月を迎えることでいて座木星期に本格的に入っていく今、かに座の人にとってもまたそうした敗北力が試されるときがやって来ているように思います。
いずれ自分も燃料に
仏教には観想というイメージトレーニングの瞑想修行の伝統があり、その中に人体が死後に膨張し腐乱して蛆がたかり、野良犬やカラスに食い荒らされて、やがて白骨となるまでのプロセスを9段階に分けて観想することで、煩悩を防ぐというものがあります。
朽ちてゆく亡骸には、凄惨でありながらもどこか人を魅了する美しさがありますが、それは見る者がそうした死のプロセスに、自然へ還り万物循環をめぐらしていく上での、滅びの美学、すなわち敗北力の結晶体を想い重ねているからでしょう。
生きるということは最後は無に没していくわけで、当然それが敗北でもあるんです。
だからまず徹底的に負けを認め、自分をきちんと土に返していくことも、そうした万物循環の中での一フェーズであり、やがてはぐるりと巡って、あなたもまた誰かの燃料にならんと朽ちていくのです。
今週の課題テーマである「敗北力」というものも、ある意味でそうした循環のサイクルを受け入れ、その中に入っていくという意志表示であり、そこではあなたがどこまでの循環を肌身で感じられているかが問われていくでしょう。
もしそういう時を迎えた際に不完全燃焼することなくよく燃えるように、悔いなく、今を完全燃焼させていくことが、せめてもの人や世界へのやさしさなのかもしれません。
今週のキーワード
成功は失敗の型から出来上がっている