かに座
祈りと未来
一望俯瞰へ向けての努力
今週のかに座は、さながら人力飛行という夢のごとし。あるいは、よく練られた祈りをたかだかと掲げていくような星回り。
人力飛行機は、人間の筋力のみを動力源とし飛行する飛行機のことで、日本では「鳥人間コンテスト」などでもよく知られるようになりました。
自力飛行は人類にとってずっと夢見られてきた夢であり、少しでも長く、遠く空を飛び続けていくことに多くの人たちが心血を注いできましたし、これからもそれは変わらない。
しかし、それはなぜか。おそらく、自力で空を飛ぶということが、きわめて祈りに近い行為であるからでしょう。
たとえば東日本大震災の後に出た対談本の中で、内田樹は次のように述べています。
「祈りってさ、要するに今の心の話からいったならば、メタ認知っていうかね。祈るっていうのは、この世界の上にある種の統一原理というか、超越的な意志というか、この世界全体に意味と秩序をもたらしている「何か」が存在するということを前提にしていって、その「何か」まで一回疑似的に自分を上げていくわけでしょう。グランドレベルにあってものを見ているんじゃなくて、すーっと意識が上がっていって、祈っている自分と、自分は誰のために祈っているのかっていう全体を、ある種、上空から一望俯瞰する」(内田樹・名越康文・橋口いくよ『原発と祈り 価値観再生道場』、2011年)
もちろん普通に生きていれば、切迫感を持って「祈り」に接する機会はあまりないかもしれません。
ただそれでも、自分が生きている現実に何らかの意味と秩序を求めていくとき、人は自然と祈るものであり、人力飛行機というのはそうした祈りが具現化したオブジェに他なりません。
今週のあなたは、どこかでそうした祈りへと向かっていく推進力を得ていくことでしょう。
視点の高度をあげる
たとえ外で雨が降っていようが、今これを読んでいるのがコンクリートに囲まれたマンションの一室だろうが、とにかく外へ出て30秒でもいいので空を見上げてみることをおすすめします。
というのも、閉塞した視野からは決して未来への祈りは生まれてこないから。
「雲は知っていない、
なぜ、この方向に
このスピードで動いていくのかを
知らない。しかし、空はすべての雲の秩序を把握している。
君達にもそのことがわかるだろう。
地平線の向こう側が見える程の
高みに立った時には。」
(リチャード・バック、『イリュージョン』)
空を見上げながら、ゆったりとした気分で心の中から「雲」を取り除いてみる。すると、雲なんて最初からなかったかのようにどこかへ消えてしまう。
そんなとき、あなたは雲の向こう側に広がる未来をこれまでにない鮮やかさで捉えていくことができるはず。
今週のキーワード
メタ認知機能の向上