かに座
交感の儀式
モノに自分がデザインされていくということ
今週のかに座は、モノにきちんと向きあっていく儀式のごとし。あるいは、モノに癒され、何らかの行為を促されていくような星回り。
例えば墓碑や位牌というモノは、そこに向きあう人の働きかけに応じて故人や先祖の記憶を再生させていくためのモニュメント。
そこでは、モノはただ一方的に人間の側からの働きかけを受けるのみならず、そこに投影された信仰が翻って人間の側へも働きかけていくことで、結果として信仰が社会的な命を宿し、またその継続を可能にしていく上での具体的な根拠となっていきます。
実際にやってみると分かるのですが、周りを掃き掃除をしたり、墓石を磨いたりしていると、そうした‟相互作用”はますます手応えをもったものとして感じられてきます。
もちろん、この対象は何であっても構いません。
一定の時間そのモノに向きあうことだけに集中し、きちんと愛着や敬意をもって接していくことで、そのモノはあなたの振る舞いや信念を社会的にデザインしていくようになるはず。
今週は、そんなモノに促されていく感覚を存分に養っていきましょう。
交感(ボードレール)
「自然は神の宮にして、生ある柱(はしら)
時をりに 捉へがたなき言葉を洩らす。
人、象徴の森を経て 此処を過ぎ行き、
森、なつかしき眼相(まなざし)に 人を眺む。長き反響(こだま)の 遠方(をちかた=向こうの方)に混じらふに似て、
奥深き 暗き ひとつの統一の
夜のごと光明のごと 広大無辺の中に
馨と 色と 物の音(ね)と かたみに答ふ。(中略)
無限(はてなし)のものの姿にひろがりて、
龍涎(りゅうぜん)、麝香(じゃこう)、安息香、焼香のごと、
精神(こころ)と官覚(にく)の法悦を歌へる、薫(かをり)。」
こういうふうに「交感」をしていると、それがモノであれ、自然であれ、なんだかただのモノや自然ではなくなってくる時があるのです。
今週はそういう瞬間を存分に味わっていくといいでしょう。
今週のキーワード
自分だけのモニュメントを持つ