かに座
血を受け継いでいく
古い血によどんでいるもの
今週のかに座は、「能の地の血脈昏き天の川」(角川春樹)という句のごとし。あるいは、自分の中に流れる血の部分で感応するような力に染まっていくような星回り。
掲句は、世阿弥が使ったといわれる「阿古父尉(あこぶじょう)」の面など、能関係の品物が多く奉納されている奈良県の天河神社の境内の句碑に刻まれている一句です。
問題は、そういうある意味で華々しく、由緒正しき場所に、作者がなぜ「昏き血脈」というイメージを重ね見ているのか、ということ。
ただこれは、そんなに難しい話ではなくて、長い歴史が積み重ねられていれば、そこには必ずバイオレンスとエロティシズムが存在するのだという作者の直感なのでしょう。
私たちもまた、自分がしている仕事の業界だったり属している流れの系譜など、世代間の蓄積の上に立っている訳で、さかのぼれば必ず昏い部分に突き当たっていくはずです。
今週はそういう部分に目を背けたり覆い隠すのではなく、むしろ古い血の中によどんでいるバイオレンスやエロティシズムに感応していくことで、マグマのような熱いものを自分の内側から溢れさせていくことができるでしょう。
血統と才能
ゲーテが若きエッカーマンとの対話の中で残した言葉に次のようなものがある。
「芸術には、すべてを通じて、血統というものがある。巨匠をみれば、つねに、その巨匠が先人の長所を利用していて、そのことが彼を偉大にしているのだ、ということがわかる。」
これは裏を返せば、巨匠になれない多くの者は、自然や血統が自分に与えてくれた以上のことや、以外のことをしようとするために、才能の限界からはみ出してしまうのだということでもあるように思います。
やはり自分が受け継いでしまった血をきちんと顧みて、その脈動の中でこそ自分の才能を活かしていくこと。
それが今週のかに座のあなたにも通じる、先人たるゲーテからの教えであり、すべての表現者へ向けられたメッセージとも言えるでしょう。
今週のキーワード
ゲーテとエッカーマンの対話