かに座
間延びした声で真実を語れ
市原悦子は宇宙人
今週のかに座は、異様にゆっくり話す女優・市原悦子のごとし。
『まんが日本昔ばなし』のナレーションに代表される、丁寧だけれど妙に間延びしたゆっくりボイスで知られる市原悦子をご存知ですか?浮かれきった世の中の、過剰に周囲を気にした自意識の渦なんてどこ吹く風といった様子で、独自の市原ワールドを作っていくその芸風はまさに唯一無二。
今週のあなたは、表層的な現実や、狂騒的な意識の波を遥か上空から見透かしていくような視点で、自分なりのテンポを刻んで語りを紡ぎ出していけるかどうかが問われてくるでしょう。
その中で、これまでバラバラに認識していた事実が結びついて一つの風景となって広がったり、人生やこの世界の背後に深い神秘を感じるような瞬間が訪れることもあるかもしれません。
その時は「我見たり」と不敵な笑みが自然と浮かんでくるはず。
不思議な熱に浮かされて
『家政婦は見た!』は市原悦子が家政婦としてさまざまな家庭に潜入しては、ありのままの現実を目撃していくドラマであり、トミー・リー・ジョーンズの「宇宙人ジョーンズ」の姉妹編にあたるシリーズですが、両者の違いは地球人への視線の向け方にあります。ジョーンズのそれには哀愁と諦観が漂うのに対し、市原悦子の視線には驚嘆の陰に不思議な熱のようなものが宿っている。これは潜入先の家庭が、毎回何かしら隠し事を持っていることがほとんどで、不倫、家庭内暴力、近親相姦などが日常茶飯事であることと大いに関係があるでしょう。
どんな家庭にも、どんな人間にも秘密があり、それ故にこそ、あなたにしか語れない真実がある。このことを今週は頭の隅に置いておいてください。
ちなみに、ジョーンズと違って、市原悦子は最後に必ず全てを暴露するのですが、エンディングシーンで何故か怪我を負っていることが多いのも気になります。
今週のキーワード
独自の語りでマイワールドをつくる、神秘的瞬間、驚嘆と不思議な熱、自分にしか語れない真実が必ずある、『まんが日本昔ばなし』、『家政婦は見た!』