おひつじ座
怒涛と一揆
時間の大波
今週のおひつじ座は、「今年また怒涛のなかの更衣」(鷹羽狩行)という句のごとし。すなわち、自分を刷新させていくための、具体的な踏ん切りをつけていくような星回り。
「更衣」は6月1日。いま取り上げるのは少し遅い気もしますが、変わりゆく季節に応じて変化させていくのはなにも服だけではありません。
住む家や、仕事、付き合う友人、顔つき、そして名前まで、人は人生の各季節に応じて変えていくものですが、いまあなたは何を変えようとしているのでしょうか。
掲句では、さらにそうした「更衣」を怒涛のなかで行っていくという。おそらくこれは実際の荒れ狂った海の怒涛のことではなく、心の中の怒涛、すなわち作者のすぐそばで唸りをあげて逆巻いている時間の大波のようなものだろう。
人はときどき、そういうものを心の深いところで感じとってしまうようにできているし、それに呼応していくために装いを変え、居住まいをただして、次第に怒涛そのもののになっていく。
今週はそうして古くなってしまった自分を刷新させていきながら、新しい季節を迎えていくための準備を整えていきましょう。
一揆と違和感
時間の大波で思い出したのですが、中世史家・網野善彦の著作を読んでいると、中世後期から民衆のあいだで盛んに行われるようになった一揆の現場には、大勢の百姓の背後に背後に、数限りない「賤民」や「化外の民(野蛮人の意)」が立ち現れてきて、思わず眩暈を覚える時があります。
その中には遊女、巫女、助産師、女商人などの遍歴する女性たちや、鋳物師、博打打ち、薬売、唐人などの職人・芸能民なども含まれており、そこに居並ぶ人間の色彩の豊かさに、一揆に対してなんとなく抱いていた、どす黒い土気色に染まった暗い顔のイメージが打ち消されていくような気さえしたものでした。
彼らの存在が教えてくれるのは、人類の歴史において、自由と野性に開かれた人間というのは、しばしば社会の側から抑圧と差別と蔑視に射すくめられてしまう運命パターンを内臓しているのだ、ということ。
隷従とは慣れでもありますが、その意味では、一揆の前提には「いつまでも慣れない」という事態や自己認識があり、そうした違和感を行動へとつなげた結果が一揆なのです。
今週もしなんとなく自分がしようとしている行動があるなら、それが自分の中でどんな違和感に由来しているのか考えてみるといいでしょう。
今週のキーワード
違和感を行動へ繋げる