
おひつじ座
羽衣をまといて

もっとも大切な平常心
今週のおひつじ座は、『ふだん着でふだんの心桃の花』(細見綾子)という句のごとし。あるいは、無心化された笑みをさざなみのように広げていこうとするような星回り。
春の花の代表的なものは気高い梅と絢爛たる桜だが、もう1つそこに加えるとすれば、それは桜の少し前にどこかひなびた味の花を咲かせる桃だろう。
ちなみに「啓蟄(うお座後半と対応)」の次候は「桃始笑(ももはじめてさく)」といい、「咲」ではなく「笑」が使われる。昔は花が咲くことを「花笑み」と言ったが、花のように笑うことも同じ言葉を使う。桃は笑って、人が微笑んで、そういう連なりの輪のなかで、いつしか桃が長寿の象徴とされるようになったのかも知れない。
そして、掲句はそうした生き方の心得を、さらに「ふだん着でふだんの心」でいるとき、すなわち犬の散歩に出たり、ジムで汗を流したり、八百屋で買い物したりといった何気ない日常を過ごしている時の服装の気分にこそ重ねようとしている。
盛装で臨む特別な場で交わす笑みというものもあるかもしれないが、そこにはどうしたって作為が入りこむし、素顔の表情とのギャップが生じてくる。そこには桃の花のような素朴で純真な花は咲かない。サンダルをつっかけ“ちょっとそのへん”に出かけていく時の口元に浮かぶ自然な笑みにこそ、長寿の秘訣はあるのだ。
3月20日に自分自身の星座であるおひつじ座に太陽が移っていく(春分)今週のあなたもまた、自分のふだん着に似合うような花を部屋に飾ってみるといいでしょう。
「ふよふよ」というオノマトペ
時にどんなに工夫をこらした言葉よりも、「よく分からないけどなんか分かる」といった感覚をもたらすオノマトペのような言葉が、疲弊した心にぴたりとハマることがあります。
中でも、風が草木を微かにそよがせる時の「そよそよ」とも、筋肉と何ら連動しない柔らかい肉が震えながら、その震えだけを波紋のように広げていく「ぷよぷよ」ともどこか異なる「ふよふよ」という言葉は、今まさに春分を迎えようとしているおひつじ座の人たちを象徴しているように思います。
ふよふよとは、例えばほとんど重さというものを欠いた小さな羽虫が微細に揺れ動くときの擬音語であり、はかなくて脆弱で、思わず後ずさりするような異質を秘めた、未知の振動体を予感させますが、おそらくそれに続く行動には戦略性や駆け引きといったものはほとんど含まれないはず。今週のおひつじ座もまた、ふだん着のこころで、ふよふよと世に対していきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
Dr.ハインリッヒの「はごろもフーズ天空支店」





