おひつじ座
ただそこにいる
無名の生きざま
今週のおひつじ座は、『姓名は何子か号は案山子かな』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、ごく平凡に、無名のままに過ごすことの喜びを再確認していくような星回り。
秋の行楽日和に、街から離れて郊外へと足を運ぶと、田畑が広がる光景が少なからず目に飛び込んできますが、おそらくこの句はそうした山野で遊び楽しんでいた折に、あちこちに佇む「案山子(かかし)」を見かけて、ふと思いを新たにしたことで生まれてきたのでしょう。
この者たちにも、姓は何々、名は某と、それぞれに確かな名前のようなものがあるのかも知れないが、人はただひとまとめにして「案山子」とばかり呼んでいる。「それもまたよかろう」とばかりに、押し黙ったままひたすら人間の代わりに田畑に佇みつづけている様は、なんとも尊いものではないか、と。
宮沢賢治が病床で書いた『雨ニモマケズ』(働き続ける/そういう人に私はなりたい)ではないですが、どこか仏教において悟りの第一歩とされる「忍辱」の精神(苦難や困難に耐え忍ぶ)を体現者と対しているような感じもします。
現代で言われている「自己実現」などという言葉は、何の事はない地位や名声を得るための、むなしい自己顕示競争に駆り立てる蟻地獄のようなものであり、「自分の人生の主人になる」ということとは似て非なるものでしょう。とはいえもちろん、友だちと付き合うのにも、自分に合った職分を見つけ出し、その職分をまっとうするのにも努力は必要です。
10月11日におひつじ座から数えて「社会参加」を意味する10番目のやぎ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、そういう世の中を共に担う努力を続けながら、いかに「有名になる」ことに囚われないでいられるかが問われていくはず。
遊び人こそ無名者である
日本社会にはいまだに「やりたくないことを我慢してやること」=仕事という考え方が蔓延しており、少しでもそこからはみ出している人を見つけると、寄ってたかって袋叩きにするのを正義か何かと勘違いしている人が少なくないように思います。
しかし、大きな運気の流れで見た時、こうした我慢=仕事という文脈から幸か不幸か今のタイミングで外れていこうとしているのがおひつじ座の人たちと言えるでしょう。
多くの企業は不況になったり事業に行き詰まってきた時ほど、無理やり仕事を作って雇用を維持し、赤字になっていくパターンを踏襲してしまいますが、その点、今のあなたのテーマはそうした無理な現状維持をいさぎよく止めてしまうことにあります。
イヤイヤ働いて退勤時間が来るのを指折り数えるくらいなら、いっそ「ただそこにいる」という状態(案山子)にいったん自分を置いてみよう。そして、どうしてもやりたくして仕方がないこと、少しでも我慢もストレスもなく好きでやれることに着手してみよう。
そう言うと、必ず「現実は甘くない」という言葉が飛んでくるものですが、それもまた‟好きで好きでたまらないもの”を確かに持っているということ、それ自体が現代日本において精神的な豊かさにおける指標になっていることの裏返しなのではないでしょうか。
いずれにせよ、今週のおひつじ座は、一般的な労働信仰や成功信仰から抜け出ていくことがテーマとなっていくでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
STOPザ我慢