おひつじ座
いろんなのがおりますな
秋世界の距離感
今週のおひつじ座は、『宿の子の寝そべる秋の積木かな』(田中裕明)という句のごとし。あるいは、気ままにさびしげに浮き世の縁を結んでいこうとするような星回り。
旅先で泊まった宿での一幕でしょうか。両親ともに商売でなにかと忙しく構ってもらえない「宿の子」は一人遊びにも慣れている一方で、しばしば客をはじめ見知らぬ大人に気にかけてもらう術にも長けていますから、作者もそんな大人の一人だったのかも知れません。
季節はすでに秋。寝そべる床はひんやりと冷たく、積み木をつむ音もカタリとした硬質な響きをはなち、それを見ている作者と子どもの距離感もどこかスッとした広がりを感じさせます。
おそらく、今週を前後して秋の実感はいよいよ深まっていくはずですが、掲句の「秋の積木かな」という結びは、どこかそうした実感の垂直的な高まりにも重なっていくようです。
その意味で、この句において景色ははじめさりげなく横に広がっていきますが、最終的には縦にもスッとのびていって、秋世界特有の広大なスケール感と、鮮やかに浮彫りになるさびしさの感覚とを、じつに的確に引き出し、増幅してくれているのではないでしょうか。
9月22日におひつじ座から数えて「リレーションシップ」を意味する7番目のてんびん座へ太陽が移っていく(秋分)ところから始まる今週のあなたもまた、自身のお付き合いをさりげなく拡張していくことがテーマとなっていきそうです。
自分たち以上に豊かであるかも知れない存在
例えば森の朽ちた倒木などに張りついている変形菌は、基本的には小さくて目立ちませんが、アメーバのように粘液状になって動き回り、脳がなくても問題を解決できたり、半分に切断されても自己修復できる不思議な姿や生態をもった生物であり、ひと昔前のアメリカでは「変形菌は宇宙からやってきた」とまことしやかに説かれていたりしました。
もちろんこれはデマですが、変形菌が地球上に誕生した正確な年代はいまだに分かっておらず、少なくとも数億年前には誕生していたとされているにも関わらず、まだまだその実態は広く知られておらず、先日パリ動物園で720種類もの性別をもつ変形菌の一種モジホコリが公開され、改めて話題となりました。
ただ変形菌の性の多様性の本質は、単にオス/メスの2つに限定されない種類の多さに限らず、場合によっては性が2つの場合もあれば、1つのこともあるという柔軟性にこそあるように思います。
今週のおひつじ座は、こうした自分以上に豊かに生を謳歌しているかもしれない相手や存在を、無視したり、叩き潰したりする代わりに、そっと見守ったり、声をかけたりしていくことがテーマとなっていきそうです。
おひつじ座の今週のキーワード
いつまでも無視していても仕方のない相手や存在にきちんと目を向けて、そこへ向かって手や足を伸ばしていくこと。