おひつじ座
すこやかに
意識変容術を耕す
今週のおひつじ座は、ウルトラマンの変身シーンのごとし。あるいは、芸能の基本に立ち返っていこうとするような星回り。
特撮ヒーローの原点ともいえる『ウルトラマン』シリーズの脚本家として知られる金城哲夫は沖縄出身であり、沖縄のマレビト(来訪神)やニライカナイ(海の彼方にある異界)のイメージをベースに、そこに弥勒菩薩やSF的な発想を重ねることでウルトラマンというヒーローを創造しました。
ウルトラマンは基本的に、特定の動作と掛け声によって巨大なマレビトの姿へと変身し、この世に訪れ直してくるのですが、変身が始まると強い光線や光の流れのような現象が起こり、これは瞑想や儀式による意識変容を連想させます。
一方、ウルトラマンが戦う「怪獣」たちは荒れ狂った土地の精霊を連想させる存在であり、ウルトラマンはみずから繰り出す光の波(スペシウム光線)によって彼らを撃退していましたが、これもやはり古代における歌垣、すなわち男女が集まって歌い踊るお祭りの再現に他ならなかったのではないでしょうか。
その意味で、ウルトラマンの変身シーンには現代人がとうに失ってしまった古代的な「芸能の基本」が詰まっているのだと言えます。YouTubeには各ウルトラマンごとに変身シーンがまとめられているので、自分の好みの変身を探してみるといいでしょう(個人的にはアクロバットなアクション性が強いレオやエースがお薦め)。
9月3日におひつじ座から数えて「儀礼」を意味する6番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、改めて多様な情動を発動させていくだけの豊かな芸能的な身体性を取り戻していくことがテーマとなっていきそうです。
Between the Worlds
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の終盤、夢の世界「ファンタジーエン」での冒険を終えた主人公バスティアンに向かって、謎の本「はてしない物語」の持ち主は、次のように語りかけました。
ファンタジーエンに絶対に行けない人間もいる。……行けるけれども、そのまま向こうに行ったきりになってしまう人間もいる。それから、ファンタジーエンに行って、またもどってくるものもいくらかいるんだな、きみのようにね。そして、そういう人たちが両方の世界をすこやかにするんだ
そう、夢と現実の両方の世界をすこやかにするためにこそ、祈りや儀式は行われるし、小説もまた書かれる。
だからこそ、それらは何かぶっとんだ非日常なんかではなくて、人間が人間らしくあるために、この世界の片隅で粛々と日々実践されていかねばならない「生命線」なのです。
今週のおひつじ座もまた、そんな生命線をどこにどう引いていくのか(デザイン)を改めて考え、そしてみずからの手で実践してみてください。
おひつじ座の今週のキーワード
マレビト姿への変身と3分リミット