おひつじ座
おるらく
微風に溶けていく
今週のおひつじ座は、『やはらかく胸を打ちたる団扇かな』(片山由美子)という句のごとし。あるいは、意識や身体の速度をゆるめて遅くしていこうとするような星回り。
胸元で団扇(うちわ)を使う、そのちょっとした仕草について詠んだ句。人前でせかせか使われる傾向のある扇子(せんす)と違って、団扇はひとふり煽ぐのにそれなりに力が要りますから、おのずとゆったりと寛いだ時間に使うもの。
そのことを「やはらかく」と表現することで、団扇のそよ風をうける胸まで柔らかいものとして想像されてくるはず。情景としては季節柄、蚊遣りを点しての夕涼みでしょうか。
こういう余計な言葉がひとつもなく、かといって不足もないような一句を口に出して何度か音読していると、自然と胸を打つ鼓動までもやはらかくなってくるから不思議です。
そよと寄せては返す波のような微風に溶け込んでいくほどに、このところ昂っていた神経や上体への気の過集中もほどけていくのではないでしょうか。
7月12日におひつじ座から数えて「ハート」を意味する5番目のしし座に金星(平和と調和)が入っていく今週のあなたもまた、ふとした仕草であれ時間の過ごし方であれ、何かと「チル」を取り入れてみるといいでしょう。
手元を風が吹き抜けていく
言い換えれば、今週のおひつじ座のテーマは「パラノ(固執)」から「スキゾ(逃走)」へという風にも置き換えることができるかも知れません。
つまり、過去に人から受けた恩や傷に延々とこだわったり、是が非でも挽回しようといった態度から、それらをさっと水に流す行為へとシフトしていく、といったように。特に気合いで何とかするとか、頑張ればぜったいに結果につながる、なんてマンガ的精神論はここで即刻捨ててしまいましょう。
あるいはもし、いまあなたが抱えている利益や立場を大事に感じていて、現状のパターンややり方に安住しようとしているなら、そのパターンによって得られる安定安全の虚構性をいま一度疑ってみる必要がありそうです。というのも、脳というのは余裕がなくなるほどに絶えず誤作動を起こしていくものだから。
今週のおひつじ座のあなたは、手元をいそがしく動かしていくより、そこを時おり吹き抜けていく風の感触や、そこで感じた気持ちの流れにこそ感覚をとぎすませていくといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
固執から逃走へ