おひつじ座
ありをりはべりいまそかり
「今はまだいない者」
今週のおひつじ座は、神自身の自己紹介のごとし。あるいは、自分自身をこれ以上ないほどかけがえのない存在として扱っていこうとするような星回り。
聖書の『出エジプト記』には、神自身が自己紹介を行う場面が幾度か出てきますが、例えば3章12節に「わたしは必ずあなたと共にいるであろう」という一節があります。
「いるであろう」は原典ではEHYH(エヒイェー)、英語のbe動詞にあたる一人称単数の未来形です(古ヘブライ語には時制がない)。すなわち、そうなるかも知れない行為、くり返し反復される行為に使用される言葉なわけです。そして、最後にモーセが神に「その名は何かと問われたら、何と答えましょうか?」という問いを発し、それへの返答が以下。
わたしはあるであろう、(まさに)わたしがあるであろうように(3章14)
これは先のEHYH(エヒイェー)という言葉が2度繰り返され、それを関係代名詞がつないだ言葉なのですが、もうちょっと口語的に表現すれば、「将来あるだろう」とか「いつか現れるだろう」とも言い換えられます。つまり、神の名は「今はまだいない者」であり、そういう意味では「不在」なのですが、続く発言のなかで、「今はいない。だがいつかは現れる。わたしが出たいと望んだ時に」と述べ、「あるであろう者―それがわたしの名だ」と繰り返しているのです。
その存在がかけがえのないものならば、その名もまた同等にかけがえがない。モーセの十戒では神の名をみだりに呼ぶことが禁じられていますが、不在の神は名の中にこそいるのであり、それは本来、私たち一人ひとりも同じなのではないでしょうか。
4月9日に自分自身の星座であるおひつじ座で新月(皆既日食)を迎えていく今週のあなたもまた、リアルタイムでうまく説明はできなくとも、自分がなにか特別で、神聖なものに関わっているという感覚を改めて呼び覚ましていくことがテーマとなっていくでしょう。
一個の生きた深層心理
今日、ユング心理学の名前で親しまれている心理学者のユングは、現代人がイメージするような明晰で物知りな学者というより、「一個の生きた深層心理」と言った方が真実に近く、したがってここでもユング心理学とは何かなど、本来は急いで説明したり解説したりするべきものではないのでしょう。
ただそれでもあえてユング心理学の特徴について述べれば、それは「布置(コンフィギュレーション)」であり、心とはさまざまな自分を表すシンボルの置きぐあいに他ならず、自我(エゴ)と自己(セルフ)であれ、童子と老賢者であれ、ユング心理学の中身は大体が2つ以上の自分自身の“対話”から成り立っているのだということに触れざるを得ません。
そして重要なことは、ユングが個人の無意識のうちに「自我の中心」ではなく、むしろ自我がほしがっている「心の補償作用」を見ようとしたこと。つまり人のひねりだした思想や宗教だって、何かのついでの補償作用なのかもしれないと、ユング自身もまた考えていたということです。
その意味で、今週のおひつじ座もまた、「一個の生きた深層心理」として、人生を通して自分自身との対話を深めていく過程になるのだということを意識して過ごしてみるべし。
おひつじ座の今週のキーワード
わだば日本のユングになる