おひつじ座
自分の中心に何を置くか
方便と建前の大切さ
今週のおひつじ座は、『むざんやな幾世活んと薬喰ひ』(溝口素丸)という句のごとし。あるいは、過去を振り返りつつ、これからの時代を生き延びていくための知恵をひねっていこうとするような星回り。
作者は小林一茶と同時代の江戸時代中期の俳人。「むざんやな」の意は、なんと哀れでいたわしいことだろうか、といったところでしょうか。
江戸時代以前、仏教の影響で日本では家畜を殺した獣肉を食べるのは禁忌であり、足の数が増えるほどその度合は増すものと考えられていました(四足獣>鳥)。しかし、それはあくまで表向きの建前でもあって、実際には「薬」と称して肉を食べていたのだとか。
特に、栄養が不足しがちな冬の時期は、滋養をやしなうためにも鹿や猪などが好んで食べられた。そうやって、生き延びるための方便と建前とを当然のように駆使して、こんな年寄りになるまで自分(たち)は老い永らえてきてしまった。いやはや、何歳まで生きようとしているのか。
と、作者はここで自分のあさましさや卑しさに半ば呆れかえってみせている訳ですが、一方で、本音や本性をこれ見よがしにむき出しにしたり、自分は何も間違ったことはしていないと堂々と破廉恥な振る舞いをするのでなく、それらを包み隠そうとするだけの恥じらいや慎み深さというのは、それ自体がひとつの知恵であったように思います。
2月10日におひつじ座から数えて「中長期的なビジョン」を意味する11番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、「薬喰ひ」のようなある種のずる賢さをもっともっと存分に駆使していく覚悟を固めていきたいところです。
弱さからの逆統合
ここで思い出されるのが、オランダのエルメロという町のことです。人口が3万人にも満たないこの町は、住民の多くが障がい者であり、それを象徴するように街の中心には大きな精神病院が建っているのだそうです。
いわば、強さが弱さを統合するというどの社会でも見られる一般的なやり方とは真逆の、弱さが強さを逆統合する形で街がつくられ、家々は同胞である障がい者たちを塀の中に閉じ込めて見えないようにするのではなく、オープンに向き合ってできるだけなだらかな連続性のなかで受け入れている。
その証しとして、病院の敷地内にも多くの住宅が建てられており、逆に市街地にも多くのデイケアや作業所、共同住宅があります。これはつまり、弱まってしまった個々の生命力を回復させていくための方便や建前として都市設計が組まれている実例と言えるのではないでしょうか。
そして今週のおひつじ座もまた、そんなエルメロの街のように、どうしたら自分の思想にかなった生活を持続的に続けていけるかといったことが問われていくはず。
おひつじ座の今週のキーワード
弱さを真ん中に据えて自らの生活設計を組みなおしていく