おひつじ座
年は変われど歌は続く
年を越えてそこに在るもの
今週のおひつじ座は、『去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如きもの』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、昨年を振り返ってひとつの教訓を得ていくような星回り。
この国では新しい年が明けると、政治的な大事件であれ、歴史的な偉人の逝去であれ、旧年中のことはきれいさっぱりみんな忘れてしまうようなところがありますが、掲句では、年が明けた後に旧年を振り返っていて、その上で、「貫く棒」のように旧年と新年とはまっすぐに繋がっているのだと喝破している訳です。
人間たちは自分たちの勝手な都合で旧年と新年とを切り離してしまうけれど、宇宙的ないし歴史的な時間の流れはそうした人間の都合でキャンセルされることなく、年の節目に関係なくとうとうと流れ続けている。掲句の特徴は、それを「貫く棒」として視覚化・形象化してみせてくれているところにあるのだと言えます。
もし作者が言うように、今迎えている新しい年が、去年と地続きの一個の巨大な棒のようなものだとしたら、そこにはどんな模様が走り、どんな記号や文字が刻まれているのでしょうか。
1月11日におひつじ座から数えて「社会的成果」を意味する10番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな具体的なイメージとともに、昨年の記憶を掘り起こして、改めて教訓として刻みつけていきたいところです。
ユーミンの『中央フリーウェイ』
1976年に作られ、「荒井由実」名義としては最後の曲となったこの曲は、70年代の大都市で暮らした人たちの感性を代弁する曲とされています。
いわゆる学生運動が盛んだった60年代が終わり、若者の気質もいわゆる“ノンポリ”へと変わって、「新人類」という言葉が生まれた70年代は、日本の経済発展の象徴であった中央自動車道が全線開通されていったタイミングでもあり、調布方面から八王子方面へと車を走らせると見えてくる景色をそのまま歌詞にしたのがこの曲でした。
中央フリーウェイ
調布基地を追い越し 山に向かってゆけば
黄昏(たそがれ)が フロント・ガラスを染めて広がる
中央フリーウェイ
片手で持つハンドル 片手で肩を抱いて
愛してるって言ってもきこえない 風がつよくて
この歌は、ユーミンの内発的な感覚というより、自分の感じていることを外から見ている、軽やかな自己相対化の感覚で歌われた曲であり、それがいい意味で都会的で効いていたように思います。
今週のおひつじ座もまた、どこか変わりゆく街並みを客観的に眺めていたユーミンのように、自身の日常世界の変化を追っていきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
身の周りに起こっていく変化を肯定していくこと