おひつじ座
見えない壁に挑む
冒険は大好きだ!
今週のおひつじ座は、“人間”の定義を書き換えんとしたピーターのごとし。あるいは、自身の置かれた状況を利用した実験を行っていこうとするような星回り。
ここでは、あるとき右足の痺れからMND(筋萎縮性側索硬化症、またの名をALS)と診断されただけでなく、61歳にして余命2年を宣告されたピーターというロボット科学者がいます。彼は当初こそ恐怖と怒り、そして絶望に苛まれていたものの、やがてそれとは別種の感情が自分のなかで生まれ始めたことにも気付いたのだそう。
冒険に出るんだね!冒険は大好きだ!統計的には、私はあと2年で死ぬことになる。つまり、未来を書き換え、世界に革命をもたらすのに、あと2年の猶予があるということだ。行く手には戦いに次ぐ戦いが待ち受けていることだろう。生死を分かつような戦いに違いない。結果は2つに1つ。私たちが勝って世界のあらゆるルールを変えるか、あるいは無惨に打ち負かされるか。休戦はありえない。しかし、敗北もありえない。MNDは私に死んでほしいらしい。だが、断る。同様に、私は生ける屍のような形で“延命”することも拒否する。(…)私たちが目指すのは、“人間である”ことの定義を書き換えることだ。(『ネオ・ヒューマン―究極の自由を得る未来』)
そう、ピーターは自身の置かれた状況を“実地で研究を行う、またとない機会”と捉え、大胆にも人類初のAIと融合したサイボーグとなろうと考えたのです。
3月21日に春分、そして22日に自分自身の星座であるおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ピーターほどではないにしても、できるだけ既存の常識やルールをひっくり返していくための試みにわが身を捧げていくための計画や構想を練っていくべし。
ルールなんてぶっ壊せ
余生をかけてサイボーグになることを決めたピーターは、友人たちに早速自分の構想について綴ったメールを送っていくのですが、その中に次のような一節があります。
だが、幸いなことに今は21世紀だ!僕は有史以前から大勢に人間を呑み込んできた“暗黒の虚空”に向かうコースからは逃れられない。だとしたら、せめてこの機会を利用して、本格的な発見の旅に出る準備をしようじゃないか。とことん科学的に考えるんだ。僕は、手に入る限りのハイテクなツールを虚空の中に持ち込もうと思う。ただ生き延びるだけなんてごめんだ。僕は人生を謳歌したいんだ!自分でも、いささか血気にはやっていることは認めよう。今も昔も僕のスローガンは変わらない――ルールなんてぶっ壊せ!
ピーターは余命宣告から5年後の2022年6月に亡くなるまで、精力的に講演や執筆、研究活動をこなし、全力でそれらを楽しむことで、世の中の固定観念を大きく覆してきました。確かにあるにもかかわらず、多くの人には不可視だった人間社会の壁に戦いを挑んでいったのだとも言えます。そして今週のおひつじ座もまた、そんなピーターの歩みに少しでも続いていきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
人として目指すべき基準やあるべき姿を公的に提示していく必要性