おひつじ座
純粋であるということ
「冬の草」の特別さ
今週のおひつじ座は、『不良少年不良少女も冬の草』(木原登)という句のごとし。あるいは、他人の目や噂話に振り回される代わりに、自分の実感に正直になっていこうとするような星回り。
「冬の草」という一風変わった季語と意外なモチーフを取り合わせた一句。草は1年中生えていますが、周り一面が枯れている中で生えている緑や、枯れ残っている冬草には、何か特別な感じを覚えるもの。
同様に、おそらく作者もまた、コンビニの前や駐車場などで、何やらガラのよろしくない若者がたむろしていたのを見かけた際、多くの人がそうするように単に眉をひそめたり、顔を下に向けて足早に通り過ぎたりする代わりに、何か特別な感慨に打たれたのでしょう。
厳しい冬を耐えつつ、生き生きと根を張る冬草の生命力に似た“匂い”を彼らに感じとったか、はたまた、表面的な装いの奥にどこか魂の純粋さを見出したのかも知れません。
そしてそれは、作者が単に視覚的に入ってきた情報を鵜呑みにしたり、逆に他人の目を過剰に意識して怖気づいてしまったりする代わりに、目の前にいる誰かと「出会う」べく自身の実感に問いかけ、想像力を働かせることができたからこそ可能になった詩人の業(わざ)でもあるはず。
29日におひつじ座から数えて「未来への目線」を意味する11番目のみずがめ座の半ばに太陽が達して立春を迎えていく今週のあなたもまた、ふとした違和感や引っかかりを特別な感慨へと育てていくことがテーマになっていきそうです。
宗教的狂熱
例えば、鎌倉時代に編まれた世俗説話集か何かに、街でたまたま坊主の説法を聞いて、やにわに頭を丸める盗賊の話があったのですが、その元盗賊はそれからまっすぐ西へ行ったのだそうです。それで海に突き当たって、浄土をのぞんで、最後は海にはまって死んだのだとか。
本当に極楽浄土なんてものがあるのかなんて分からないし、もし仮にあったとしてもそこに生まれ変われるかどうかも定かではない。けれど、行かずにはいられなかった。たとえそれで死んでしまったとしても、やらずにおめおめと生き永らえるよりずっとマシだという確信。そうであって初めて、それは“純粋な願い”と言えるのではないでしょうか。
この場合は、宗教的狂熱とも言えるものが、これまでそういうものと無縁だったひとりの男に突然湧きおこった訳ですが、こういうことは歴史的にはそう珍しいことではありませんでしたし、むろん現代でも起こりえることだと思います。
今週のおひつじ座もまた、さながら泉のように“純粋な願い”が湧き出しては、勢いよく自分を通り抜けていくような、そんな感覚を少なからず体感できるかも知れません。
おひつじ座の今週のキーワード
仏縁