おひつじ座
ウルトラ躁
ディオニソスの信女たち
今週のおひつじ座は、『月に躁(さわ)ぐわが細胞や六十兆』(池田瑠那)という句のごとし。あるいは、浄化と解放におのれを明け渡していくような星回り。
みずからの細胞が月光の影響を受けているさまについて、生々しく詠みあげた一句。これが作者の想像なのか実感なのかは定かではありませんが、少なくとも人間の細胞の中にあるミトコンドリアは植物の細胞の中にある葉緑素とよく似た働きをしていて、生命の源であるエネルギーの生産に関与していますから、たとえ脳はその事態を認識していなくても身体はよく分かっているのかも知れません。
なお、ここでは躁鬱病の「躁」という字が使われていますが、これはギリシャ語の「マニア(躁)」に由来しており、古代ギリシャのディオニソス神が狂乱に至らしめ、山野を駆け回り、獣の肉を引き裂き喰らっては恍惚としていた信女(マイナス)と関係する言葉でした。つまり、古代ギリシャ人にとって躁状態とは、ディオニュソスに憑依された状態を指していたわけです。
そこでは狂気が荒れ狂うほど、カタルシス(浄化作用)も大きく、人格が変容するほど生まれ変わったように日常世界に戻ることができるとされていました(もちろんおさめられない場合もあり、その場合は最終的に破壊的な結果にいたった)。
10日に自分自身の星座であるおひつじ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしたある種のピーク体験に向けていつも以上に心身が高揚していきやすいでしょう。
道の先へ行くために
図像などでDNAの螺旋を見ると、いつも昔なにかで見た、朝靄の中に聳えたつ神殿の回廊が思い起こされます。
そこでは回廊を下ろうとすると、必ずいつも回廊の隅に眠っている怠惰に足をとられて阻まれるか、回廊の荘厳さに眩暈を覚えて途中で歩みをやめてしまうのです。それでこちらも、ああ、これ以上は自力では難しいのだろうな、となんとなく察知する。
そういう夢を繰り返し見させられていたのが2022年前半くらいまでのおひつじ座の傾向だとすれば、「拡大と発展」の木星がおひつじ座にいる5月半ばから10月末くらいまでのおひつじ座は、むしろ何か強い力に引っ張られるようにして回廊の先へと歩みを進めていくような展開に入っていきやすいはず。
それはきっと、おひつじ座の人たちが自信をもって新しいサイクル、新しい現実を歩み始めているから。そして、それが自らをとりまくダイナミックな‟配置”によってたえず態勢づけられていることにも、はっきりと明瞭に気付き始めているからでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
狂気が荒れ狂うほど、カタルシス(浄化作用)も大きい