おひつじ座
だんだん自分になっていく
苦笑とユーモア
今週のおひつじ座は、「初恋のあとの永生き春満月」(池田澄子)という句のごとし。あるいは、くすりと笑ってしまえるような余裕と余白を自身にもたらしていくような星回り。
初恋のあとの長生き。それは多くの人に当てはまることですが、普通はわざわざそんなことを取り上げて歌にして人に伝えようなどとは、あまり思わないことでもあるはず。
おそらく作者は、初恋に破れたあとの悲しみに対する大げさな悲嘆と、その後、悲しみのあまり死んでしまうこともなく、紆余曲折を重ねながら生き永らえてきた自分の人生について、半ば苦笑混じりに思い返していたのでしょう。
それは同時に、ときに離反したり、悔いを残しつつも、さまざまな人を愛し、愛されてきた自身の歳月への満ち足りた思いも含みつつ、それをどこか潤んだように輝く春の満月に重ねていたに違いありません。
そうでなければ、初恋という人によっては執着や慙愧の念の対象になりがちなものを、ここまでユーモラスに語ることはできないように思います。
18日におひつじ座から数えて「主観の整理」を意味する6番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの悲喜こもごもの来歴をできるだけユーモアをもって受け止め、語り直していきたいところ。
ハイブローな言葉遊び
水曜日のカンパネラに『ディアブロ』という風呂をモチーフにした楽曲があります。体の芯まで温まる“親愛なる風呂”(ディアフロ)に、迷宮を探索して悪魔を倒していくあの懐かしのゲームシリーズ『ディアブロ』をかけている訳ですが、そんな軽快でハイセンスな言葉遊びが特徴の歌詞の中でも、特に興味深い一節があります。
デビル デーモン サタンにルシファー 畑になってるアルファルファ
風呂に入れば誰でも昇天 念を押すけどあくまで昇天
デビル、デーモン、サタンにルシファー。すなわち悪魔や魔王、堕天使などの単語が並んでいます。風呂に入れば、そうした救いがたいように思える存在でさえも昇天、すなわち新しいステージに入って救われていく。ついでに「あくまで」と「悪魔で」をかけて、昇天していくのです。
このあたり、『千と千尋の神隠し』でも体中ドロドロで臭気を放つ「お腐れ様」がお風呂に入って満面の笑顔をたたえた老人の顔になるシーンなども連想されます。あの場合は、元は「名のある川の神」だったのが、心ない人間が捨てた廃自転車や釣り糸などを捨てていったことで、ゴミやヘドロで汚れきってしまっていたのでした。
今週のおひつじ座は、そうした心身の汚れやこりみたいなものをキレイさっぱり落として、色んな意味で人生に余白を取り戻していきたいところです。
おひつじ座の今週のキーワード
初恋のあとの永生き