おひつじ座
業さらしな真似をする
哀愁を放つ
今週のおひつじ座は、「かわかわと大きくゆるく寒鴉」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、秘めていた思いのたけを一気に放出していこうとするような星回り。
「鴉(からす)」はどこであれ年中見かけますが、これが冬にたいてい一匹だけでいる「寒鴉(かんがらす)」となると、殺風景な厳しい環境のなかで懸命に生きていることを感じるものですが、掲句ではいささか滑稽な仕草を見せています。
「かわかわ」とゆっくりと、ゆるく、それでいて大きな声で鳴いたのです。そしてそれが過ごしやすい春や秋の鴉でも、くどくどしい夏の鴉でもなく、寒さと飢えに耐えて生きる冬の鴉がやっと発したひと声だと思うと、どこか80年代シティポップのような都会の中の孤独感や哀愁をほんの一瞬分かち合った気分にさせられるのです。
その瞬間、闇に隠れて夜の海をさすらい、流れゆくさみしい都会の人間同士のように、寒鴉と作者もまたつかの間のぬくもりを分かち合ったのかも知れません。
17日におひつじ座から数えて「貯えた内部の熱の放出」を意味する5番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、どんなに滑稽な姿になろうと、言えない言葉を胸の底に沈める代わりに、誰か何かに全力でぶつけてみるといいでしょう。
おのれのロクデナシさ加減を知る
何かを書いたり、熱心に話したりするということは、そこに言葉が介在するかぎり、その人の一番奥の方に巣くっている生霊(いきすだま)を放ってしまうということであり、普段自分でも忘れている生への恐れや、うわべでは上手に隠している悪の部分を解き放っていくということでもあります。
したがって、人を傷つけもすれば、みずからも血を流す行為であり、考えれば考えるほどすれすれの振る舞いです。しかもそれを何かしら「芸」として売り出すようなあざとい真似をしている者なら、皆すべからくロクデナシと決まっています。
けれど、そんな業さらしな真似をせずにはいられないのも人間の本性であって、どれだけ嫌気が差そうと毒気にまみれようと、いったんそういう行為に加担してしまえば、もはや元には戻れずのめり込むばかりで、それらの営みと共に生死を超えて往くしかないのです。
今週のおひつじ座は、普段自分のしでかしていることの恐ろしさとむごさを抱えながら、それでも誰かに向けて何かしらを発信していく自分の姿をよく見つめていくといいでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
The Weekndの『Out of Time』