おひつじ座
自然なボケ・ツッコミ
酒場ではみなボケている
今週のおひつじ座は、「コの字型」カウンターの大衆酒場のごとし。あるいは、そこでひとり吞みをしつつ、ほどよい共同体意識に浸っていくような星回り。
一口に大衆酒場と言っても、さまざまな形や規模のカウンターが見られます。最もありふれている形はおそらく一本のまっすぐなカウンターかと思いますが、ほかに「L字型」のもあれば、四角系や長方形のもあります。しかし、日本の居酒屋文化に詳しいマイク・モラスキーによれば「コの字」という形は比率では一番多くなくとも、最も客同士の共同体意識を生み出す形ではあるのだそうです。
まっすぐなカウンターの場合、両隣以外の客くらいしか意識することはなく、顔も見えにくく、すぐ近くに座っていてもしばらく飲んでいれば、次第に自分ひとりの空間に没入していくような感じさえ覚える。
対して、「コの字」だと、誰もがほかの客の顔を見ることができますし、また常に見られてもいるから、カウンターは自然と「みんなの場」になっていきやすいのだと。もちろん、牛丼のチェーン店のように「コの字」型でも客同士の関係が“薄い”場合もありますが、タイミングを見計らって気配りさえすれば、他人の会話に入っていくことが最も自然に許されるのが「コの字」型カウンターの最大の特徴であり、要するに、寛容な雰囲気の中で、ほどよい秩序が自然に保たれるのがその魅力という訳です。
11日におひつじ座から数えて「友達的関係」を意味する11番目のみずがめ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自然とそうしたほどよい繋がりを感じさせてくれるような距離感を取り戻していこうとするはずです。
ツッコミを必要としていない人たち
村上春樹の『約束された場所で』は、1998年に出版された元あるいは現役のオウム真理教信者へのインタビュー集であり、1995年に起きた地下鉄サリン事件を経て、どうしてその団体に入ったのか、どのような生い立ちで育ち、どうして出家しようと思ったのかなどを、村上が問いかけていくことで、彼らの肉声が聞こえてくるかのような不思議で奇妙な読後感を与えてくれます。
彼らは「救われたい人」としてそこに映り、その点で令和の私たちとの違いはないんです。ただし、彼らはどこかでツッコミを拒絶している。自分の論理の担保のために頷いてもらうことは必要としているけれど、「それおかしいんじゃない?」などとつっこまれることは必要としていないし、自分がおかしくないことを証明しようとする。でも、そういう人は現代でも、というか、最近ますます珍しくなくなっているように感じます。
その意味で、今週のおひつじ座は、村上のようにしなやかにツッコミを入れたり、逆にそうしたツッコミを上手に受けていけるかが問われていくことになるかも知れません。
おひつじ座の今週のキーワード
醒めたり惚けたり