おひつじ座
真剣勝負
一枚の宗教画のごとく
今週のおひつじ座は、「あけぼのや花に会はむと肌着換へ」(大野林火)という句のごとし。あるいは、神々しい気配がする方へ居住まいを正していくような星回り。
春の夜明けである。早く起きて花を見に行こうとしているのでしょう。普通、この時期に「花」と言えば桜の花のことを指すのですが、この際それは脇に置いてしまってもいいように思います。
というのも、ここでは「花」は単なる植物などではないから。「見む」ではなく「会はむ」という言葉があえて選ばれているのは、レトリックとして擬人化が用いられているということ。
さらに「肌着換え」とまで記しているのは、永年信仰してきた神仏へお礼参りに行く時か、久しぶりに遇う恋人と肌を重ねようとしている時かのいずれかであり、おそらく掲句はそうした敬虔さの奥に秘めたる官能性を含んでいたのではないでしょうか。
掲句を詠んだ時点では直接あいまみえてませんが、薄ぼんやりと霞たなびくあけぼのに「花」が浮かび上がるその姿は、想像しただけで神々しいものだったに違いありません。
20日におひつじ座から数えて、「情念の発露」を意味する5番目のしし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうして内に秘めたる思いを外へ解き放っていきたいところ。
一人のために
マザー・テレサはあまりに有名だったこともあり、未だにさまざまな毀誉褒貶に晒されていますが、改めて彼女のやった仕事の本質を振り返ってみると、それはただただ瀕死の状態にある人の最期を看取ることであり、彼女自身もしばしば「一人の人のため」ということを強調していたことが思い出されてきます。
一方で、現代人が好きなのは「多数の人」であり、一人の人の死に関わっているよりも、できるだけ多くの人に認知されたり、人気があったり、「社会」を変えるいけることの方が大切だし、価値があると考えられています。
けれど、本当にそうでしょうか。現代人は目に見えない多数のために働くという口実のもと、目に見える目の前の人間のために何かするのを避けてしまっているようにも思います。
特に、今のおひつじ座にとって「誰になら命を託せるか?」「本当に信用できるのは誰か?」という問いかけは、大きな意味を持つのではないでしょうか。できればマザー・テレサのように、常識的には最も非効率的に思える行為こそ大切にしていきたいところです。
今週のキーワード
本心から「あなたを必要とします」と言えること