おひつじ座
最高ではないがそれでいい
Mr./Ms. Lonely
今週のおひつじ座は、ポール・ボウルズの小説『シェルタリング・スカイ』の一節のごとし。あるいは、奇妙で絶望的で、それでいて人好きな星回り。
この小説は「極地の空」と邦訳されてきましたが、これは空は何か巨きなものに護られているけれど、その下の人間たちは極限に生きながらえているというニュアンス。物語は戦争の終わった直後のニューヨークに住む、かつての活気を失った倦怠期の夫婦がアフリカ旅行を企てることから始まります。
一応は夫婦関係の修復を目的に、夫の親友の男をひとり伴って北アフリカのアルジェからサハラの奥へと旅するのですが、うまく行かず、夫は途中でチフスに罹って死んでしまい、そこから親友は別行動に。ひとり残された妻は運命に苛まれるような日々を送ったあと、作者に突き放されるように旅の最初の町であるアルジェに戻るところで終わる。そんな何とも言えない切ない読後感の残る小説ですが、冒頭部分を引用しておきましょう。
「どこかしらある場所に彼はいた。どこでもない場所から、広大な地域を通って戻ってきたのである。意識の革新には、無限の悲しみへのたしかな自覚があった。しかしその悲しみは心強かった。というのは、ただそれだけが馴染みのあるものだったからだ。」
29日におひつじ座から数えて「喪失と慰め」を意味する12番目のうお座で約5カ月ぶりに海王星が順行へ戻っていく今週のあなたもまた、ここに出てくるような「心強い悲しみ」を自身の音楽として生きていきたいところです。
霊的な健康
かつて1999年のWHO(世界保健機構)総会において、「健康の定義」をめぐり従来の身体的・精神的・社会的な状態に、「霊的(スピリチュアル)な状態」を付け加えようという提案がなされたもののついに否決されたということがありました。
いまなお「霊的」などと書くと、とたんに胡散臭い印象を持つ人は多いと思いますが、それは本来、前世や守護霊やカルマや救済などのパワーワードと関連するより先に、季節の移りかわりや自然や宇宙の大いなるサイクルと調和した状態を指していたのだと思います。
現在、人類は空を征服するためにあれやこれやと盛んに話し合っていますが、征服するためではなく、空に祈りを捧げることを忘れずにいることこそが霊的な健康の秘訣なのです。
そして、そういうことを思い出すためには、人はどうしたって痛みや苦しみを通り抜けなければなりません。今週のおひつじ座もまた、自身自身についてそんな霊的な健康の側面から見つめ直してみるといいでしょう。
今週のキーワード
祈る対象を持つこと