みずがめ座
リアリティーの遠近法
境界線に灯るもの
今週のみずがめ座は、「狐火はいつも遠くに淋しげに」(黛執)という句のごとし。あるいは、現実と幻想の境界あたりにひとつの怪を目撃していくような星回り。
夜、野山などで、人が灯したはずのない青白い炎がちらつく現象を、古来より鬼火とか狐火などと呼んできた。
科学的には、扇状地などに現れやすい光の異常屈折などで説明ができるのだそうだが、昔の人は狐が火を吐いていると考える方がずっと自然なことだったのだろう。
案外、現実と幻想の境界線なんてものは、時代や人生の移ろいに応じて随分と変わっていってしまうもので、狐火というのはそんな移ろいをつくりだす人間の心の境界線にこそ、時折ぼうっと灯っていくものなのかもしれない。
例えば、昔読んだ本を再び読んでみるとき、その印象がまったく変わっていることに気が付く。それと同じことが、今週はあなたの中で起こっていくはず。まずは狐につままれたような顔をしている自分を想像して、何かそれらしいものを探してみるのも一興だろう。
いい表情を取り戻す
狐火を目撃している人は、ただ物理現象としての火を見ている訳ではなくて、火の向こう側とこちら側との境い目が揺れ動いている様を眺めているのだとも言える。というか、意識と無意識の境界線で心を遊ばせているのだ。
人はそうして目先の対象を超えて、境界線の向こう側へ目を向けていくことができたとき、自然といい表情になる。
いまの自分と、遠い過去の自分。夢か幻か、それとも現実と地続きの忘れかけていた記憶の光景か。
今週は、安い酒で夢みたいなことばかり語っていた自分に立ち戻ったつもりで、現実の境界線をたゆたっていきましょう。
今週のキーワード
過去と未来の交錯